高井幸大のトッテナム移籍が「吉」の理由 新監督はコミュニケーション重視で人心掌握 (2ページ目)
【守備の改善で上位争い復帰を】
2020-21シーズンまでのチャンピオンシップ(2部)時代、フランク率いるブレントフォードは、ポゼッション重視の攻撃的なチームという印象を与えた。
記憶に残っている試合のひとつに、5年前の6月、パンデミックによるリーグ中断明けの初戦となった、ホームでのウェストブロミッジ戦がある。しぶとい戦い方をするスティーブ・ブルース(現ブラックプール監督)のチームを相手に、後方ビルドアップから能動的な守備からのカウンターまで、最終スコア(1-0)やボール支配率(51%)が示す以上の完勝だった。試合後、無観客のスタンドで歓声を上げるクラブ職員たちに投げキッスで応えたフランクは、「勇気を持って攻め続ける」と言っていた試合前会見の発言どおりの戦い方で、上位対決に勝つべくして勝った。
だがプレミア昇格後は、格上との対戦が多い現実を直視し、効果的な戦い方で結果を出すようになっている。ポゼッションに長けたチームとの対戦では、基本として好む4バックから、5バック気味の3バックにシステムを変更。守備の安定性を土台として、資金力レベル、即ち戦力レベルで自軍をはるかに上回る強豪にも勝負を挑んできた。
昇格4年目で、プレミア定着の足掛かりが出来上がった感のある2024-25シーズンには、再び攻撃色を強める様子が見られた。3トップが定番だった前線にはトップ下を採用。過去2年間はケガに泣いたが、チャンスメイカーとしてもプレッサーとしても有能なMFミッケル・ダムズゴーアを最大限に活かそうとしていた。とはいえ、最終節までクラブ史上初の欧州参戦への望みをつなぎながらの10位フィニッシュは、必要とあればローブロックも厭わず、大崩れのない守備のあり方による部分が大きい。
トッテナムでも、まずは守備力を向上させる手腕が求められる。前任のポステコグルーは、ヨーロッパリーグ優勝による17年ぶりのタイトル獲得を実現しながら、降格圏寸前の17位というプレミアでの順位が不十分とみなされた。後任として課されるトップ4争い常連復帰は、20チーム中8番手の64得点を帳消しにした65失点の背景にある守備の改善なくしてはあり得ない。
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