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三笘薫、今季プレミア10ゴールの意味 日本史上、最もバランス感覚に富むアタッカーに (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【決勝点でもポイントになるプレー】

 最も高い貢献を果たしたのは三笘だった。

 後半24分、中央を持ち上がったカルロス・バレバ(カメルーン代表)から左の三笘にパスが出る。対応に出たリバプールの右SBコナー・ブラッドリー(北アイルランド代表)と右CBイブラヒマ・コナテ(フランス代表)の間に狙いをつけ、その裏を走るダニー・ウェルベック(元イングランド代表)にスルーパスを送った。見逃せないのはその後、パス&ゴーで内に入った三笘の動きだ。ウェルベックが放ったシュートがGKアリソン・ベッカー(ブラジル代表)のセーブで跳ね返ると、反応鋭く左足をたたむようにインステップでミートさせた。

 ブライトンが2-2に追いついた瞬間である。その直前に、ブライトンゴールにシュートを放ったサラーの動きを彷彿させるような、ウイング兼ストライカーらしい動きだった。これを決めきれなかったサラーと、決めきった三笘。サラーも脱帽したに違いない一撃だった。

 三笘にとって記念すべき今季プレミアリーグ10点目のゴールである。ウイングプレーというチャンスメークと、得点を決めるといういわば相反するプレーを両立させる離れ業を10回成功させたことになる。ゴール正面で構える本格派のストライカーが奪った10ゴールとは内訳が違う。

 ブラッドリーとコナテの間に差し込んだスルーパスに話を戻せば、それは10番的なプレーでもあった。ウイング兼ストライカー兼ゲームメーカー。三笘の同点弾にはプレーには3つの異なる要素が凝縮されていた。まさに三拍子揃った好選手。人気が出るのは当然である。

 その伝で言えば、遠藤航(ブラッドリーに代わり後半32分投入)とマッチアップした後半40分のシーンにも触れなければならない。三笘は遠藤をいたぶるような動きで引きつけると、大外を走るマット・オライリー(デンマーク代表)にパスを出した。

 その折り返しが試合を3-2でひっくり返す逆転弾のアシストになった。ウイング兼ゲームメーカー的な動きでオライリーのアシストプレーを引き出したのだ。単に10ゴールを決めただけではない。そこに高い価値を感じる。

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