バルセロナが圧倒的なリーグ優勝 強さの土台にある「プレーの共通言語」と仕組みを解剖する (2ページ目)
【ふたりの守備者から等距離の原則】
特徴的なのが、ボールを持っていない時のポジショニング。バルセロナのMFは基本的に相手選手の「間」に立つ。
4-4-2で守備ブロックを形成していた優勝が決定したエスパニョールとの試合を例にとると、センターバックがボールを持った時のデ・ヨングとペドリは、相手のボランチとサイドハーフの間にポジションをとる。
相手のボランチとサイドハーフをゲート(門)と捉えると、ゲートの中間点にいる場合もあれば、ゲートの奥、あるいは手前にいる時もあるが、ふたりの守備者から等距離の場所ということは同じ。この場所が、最もスペースを確保できるからだ。
4人のMFがゾーンの守備ラインを形成している相手に対して、動き回ったところでプレーできるスペースは見つからない。誰かから遠ざかれば、誰かに近づくだけだからだ。ふたりの守備者から等距離にいるのが最も相手から遠い場所になる。
とはいえ、デ・ヨングとペドリがずっと同じ場所に留まっていることはない。
ふたりの守備者から等距離の場所が最もスペースを得られるといっても、相手ふたりの距離は一定ではないので、パスを受けるには狭すぎる場合も当然ある。4人の守備ラインのひとつのゲートが狭まっているなら、他のゲートは広がっているので、わざと狭いゲートの間に留まっておいて他のゲートを味方に使わせる手もあるが、自分がパスを受けるつもりなら適切ではない。ゲートが狭すぎるケースでは、デ・ヨングやペドリはすみやかに移動する。
たとえば、デ・ヨングが狭すぎるゲートを出て、相手FWの脇あるいはふたりのFWの間に移動する。すると、トップ下のオルモがさっきまでデ・ヨングがいた場所へ下りてくる。デ・ヨングが下がることで相手のMFは少しデ・ヨングを追うので、デ・ヨングがいた時よりもゲートは広がり、オルモにとってはプレーしやすい条件になっている。
同じようにペドリが移動すると、やはり誰かが代わりにそこへ入っていく。右と左では人のローテーションが少し違っていて、左は左ウイングのラフィーニャが頻繁に中央に移動してふたりの守備者の中間に立つが、右のラミン・ヤマルは右サイドに張ったままでいることが多い。
そのため、左サイドはボールを前進させた段階で左サイドバックがタッチライン沿いに上がってウイングのポジションに入る。右サイドバックはヤマルが外にいるので、上がる時は内側からヤマルを追い越す形が多い。
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