リバプールをプレミアリーグ優勝に導いたサラー 風間八宏が他の選手と大きく異なる特別な才能を発見 (3ページ目)
【自在な踏み替えのメリット】
では、自在な踏み替えができることによって、プレーにおいてどのようなメリットが生まれるのか。その効果について、風間氏に聞いてみた。
「ひとつは、先ほどもお話したように、動いていても体勢が崩れないので頭が動かないということ。頭が動かなければ視野が確保できるので、見えるものが増えます。相手の場所や体勢はもちろん、味方の動きも見えるので、素早く最適な判断をすることができるため、パスやシュートの選択肢が増え、精度も高まります。
もうひとつは、常にボールを自分の好きな場所に置けるという効果もあります。試合中にボールを自分の体の中心に置き続けることはそう簡単な技術ではありませんが、ボールに触らないでもそれができるのは、自在な踏み替えができることの大きなメリットと言えるでしょう。無駄にボールに触れなくても踏み替えだけで相手を動かし、自分が行きたい方向に進めるので、自ずとプレースピードも上がります。
さらに言えば、ボールを置きたいところに置けるので、いつでも自分が蹴りたいタイミングでボールを蹴ることもできます。サラーのゴールシーンを見てみるとわかると思いますが、いつも抜群のタイミングで、しかも正確なキックでシュートを決めています。自分のイメージ通りのキックをするための踏み替えができるので、シュートの時に大きくバックスイングをとる必要もありません。
サッカーの試合では、足の運びやタイミングがずれてシュートをしそこねるというシーンをよく見かけると思いますが、サラーはそのようなシーンとはほとんど無縁です。
足の踏み替えは何気ない動作なので見過ごしてしまいがちですが、よく見るとなぜサラーを止めるのが難しく、これだけのゴールやアシストを量産できるのかがわかると思います。もしかしたら幼少期から特別な練習を積むことで可能なのかもしれませんが、やはりこれは持って生まれた才能としか言いようがありません。
体を動かすという点において最適な足の運びで、とにかく合理的。なかなかマネることのできない動きをする、特別な選手だと思います」
去就が注目されていたサラーは、4月11日、リバプールと2027年6月30日までの契約延長を正式に発表した。世界中のサッカーファンは、これからも特別な才能を持ったサラーのプレーをプレミアリーグやチャンピオンズリーグの舞台で拝めそうだ。
著者プロフィール
風間八宏 (かざま・やひろ)
1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在は全国でサッカー選手、サッカーコーチを指導。2024シーズンより関東1部の南葛SCの監督兼テクニカルディレクターも務める。
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