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チャンピオンズリーグでインテルがじわりと存在感 3-5-2を機能させる2トップの強さ (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【2トップが戦い方を決めている】

 1990年イタリアW杯で優勝した西ドイツはインテルに似ている。フランツ・ベッケンバウアー監督率いるチームにマテウス、ブレーメがいたせいもあるが、3-5-2システムと堅実そのものの戦い方がよく似ていたのだ。というより、この時期の多くのチームがそうだった。

 後方からの大きな外回りのパスワークは、ボールを失う危険が低い。そのままじわじわと敵陣に入ると、最後はサイドからのハイクロスというアプローチがメイン。ゆっくり攻め、ゆったりと守る。攻め手はわかりきったようなハイクロス。まあ面白くはない。ただし確実だった。機能美のようなものはあった。

 この堅実な3-5-2システムを機能させるにはいくつか条件があるのだが、そのひとつが2トップの強さである。

 大きな外回しのビルドアップのなかで、トップへのクサビのパスは重要な攻め込みルートになる。ウイングバックから斜めのクサビが通ると相手を中央へ集められるので、サイドのより深い場所への進出が可能になる。また、組み立てに行き詰まって蹴る時も、2トップのロングボール収容力が必要。さらにラストパスはクロスボールが多いので、ゴール前での高さと強さが必須になる。

 ラウタロとテュラムは3-5-2にうってつけの2トップだ。むしろこのふたりがいるからこういうシステムなのだろう。

 ラウタロは長身ではないがロングボールを収める能力が高く、そもそも苦手のない万能型である。アルゼンチン人らしい球際の強さとテクニックに優れ、インテルではすでに100ゴールを超えて外国籍選手としては史上最多得点者となっている。バイエルン戦でもアウトサイドで巧妙な先制点を決めていた。

 テュラムの父親は、フランス代表DFだったリリアン・テュラム。弟のケフランはユベントスでプレー中というサッカーエリート一家。192センチの長身を利したキープ力、空中戦の強さ、パワフルなシュートを持つ、いかにもストライカーというタイプだ。

 ポストプレーや得点だけでなく、ラウタロもテュラムもしっかり守備を行なう現代的なアタッカーである。1988-89のインテルも、前線はアルゼンチン人のラモン・ディアスと長身のアルド・セレーナの2トップだったが、昔のFWは現代ほど守備をしていなかった。ただ、2トップが戦い方を決めているところは似ている。

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