サッカー日本代表の攻撃陣がクラブに戻ると「よくなる」理由 久保建英、中村敬斗らが躍動 (3ページ目)
中村はリーグ・アンで9得点を挙げているアタッカーであり、ウイングバックでの起用は奇策にも程がある。もちろん1トップではなく、サイドアタッカーとしても相手に恐怖を与えられる。サウジアラビア戦に先発したが、ボールを持つ位置は低すぎたし、何より、フォローする選手が乏しく、半分も力を生かせていなかった。
同じくスタッド・ランスの伊東も5-4-1の右アタッカーとして、爆発的走力を生かしていた。伊東は右ウイングバックの適性がない選手ではないが、やはり所属クラブでやっていないことをさせるのは論理的ではない。彼もゴール方向に矢印を向けて力を出せる選手だ。
最後にセルティックの前田大然はスコットランドリーグ、ハーツ戦に先発。1トップのポジションに入って裏に走るスプリントで圧倒し、3-0の快勝に貢献している。相手がハイラインで背後に広大なスペースがあったことが功を奏したのだろう。1トップであることは森保ジャパンのサウジアラビア戦と同じだが、サウジのように守りを固めたチームを崩すにはポストワークなどでボールを引き出し、展開する器用さも求められる。
このように、森保ジャパンから欧州の各クラブに戻ったアタッカーたちは、刮目すべきプレーを見せている。この差が何を意味するのか。謙虚に検証するべきだ。さもなければ、W杯では現実的目標であるベスト8も厳しいだろう。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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