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サッカー日本代表の問題解決に重要な「プレーメーカー」の存在 世界最高峰はポルトガルにいる (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ボールと体をコントロールし、プレスに捕まらない】

 サッカーでは、なくなったポジションがある。リベロは今やサッカーではなくバレーボールの用語だ。ウイングも1980~90年代に一度消滅しかかった。プレーメーカーも絶滅危惧種である。

 特定の選手にボールを集めるやり方は1970年代までは当たり前だったが、70年代終わりごろにリバプールが登場して、選手の特徴や役割ではなく、フィールドを単純に右、左、中央右、中央左と機械的に区分けしたあたりから、ポジションは文字通り場所を表す記号になっていった。職人のパッチワークから、区分けされたエリアで同等に攻守を担当する形態へ変化していった。ただし、プレーメーカーの能力を持った選手がいなくなったわけではないので、自然とそれなりの実権は握っている。

 パリ・サンジェルマンとポルトガル代表のMFヴィティーニャは現代のプレーメーカーだ。トニ・クロースが引退した今、最も影響力を行使している司令塔かもしれない。

 ポルトでデビュー、2022-23シーズンからパリSGでプレーしている25歳。身長は172センチと小柄だが、歴代の名プレーメーカーも多くは小柄だった。

 ヴィティーニャの強みは何と言ってもファーストタッチだろう。一発でピタリとボールを止められる。同時に体も止められる。これはプレーメーカー、あるいはいい選手の基本条件なのだが、ヴィティーニャのレベルで実行できている選手はそう多くはない。主に中盤の後方にいてDFからのボールを預かる。その際、相手のプレスに捕まらないのは特筆すべき長所だ。

 襲い掛かる相手をいとも簡単にいなす。ボールと体をコントロールしているので、相手が勢いよく寄せてくればくるほど簡単に逆をとれるのだ。ボールが集約されるヴィティーニャにプレスがかからないのは、パリSGに対してプレスが無効であるのとほぼイコールになるわけで、この効果はかなり大きい。

 おかげでパリSGは、相手のプレスを受けて苦し紛れにロングボールで逃げるということが比較的少ない。ロングボールを蹴らないので前線にターゲットマンを置く必要がなく、ウスマン・デンベレ、フビチャ・クバラツヘリア、ブラッドリー・バルコラのウイング3人を前線に配置することが可能になっている。ヴィティーニャの存在がチーム全体の編成に関わっているわけだ。

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