三笘薫に何が起きているのか チームは6連勝、ゴール数増加の陰で失われた「縦突破」 (2ページ目)
【相手を縦にかわすことができない】
前半40分にも左の高い位置でボールを受けるシーンがあった。だが、三笘は縦勝負を挑まず、再びその背後を忠実に走ったエストゥピニャンにもパスを出さず、無難に後方へ戻している。ここまで勝負した回数はゼロ。歌を忘れたカナリアならぬ、ドリブル勝負を忘れた三笘と化していた。
この間、MFヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)、MFカルロス・バレバ(カメルーン代表)は、三笘がフリーで構えているにもかかわらず、パスを送ることを躊躇し、方向を転換している。"三笘頼み"だったこれまでからは考えられない、嘘のようなシーンだった。
あえて最大の見せ場を言うならば、前半45分のプレーだ。自軍の深いところでボールを拾ったミンテが、左前方で構える三笘の先に左足で数十メートルの縦パスを送り込んだシーンだ。三笘は対峙するティモシー・カスターニュ(ベルギー代表)とトップスピードで併走しながら、このボールをナイストラップ。チェルシー戦のスーパーゴールを彷彿とさせる鮮やかなプレーを披露した。ところが、さすが三笘と思ったのも束の間、カスターニュに身体を寄せられボールを失ってしまう。
後半6分にはカスターニュに対しこの日、初めて自ら縦勝負を挑んだ。しかし抜けなかった。あえなく止められてしまう。自信満々だったかつてとは明らかに様子が違っている。「いったんトライしなくなると、どんどん抜けなくなる」とは、あるウインガーの言葉だが、その気配をいまの三笘にうかがうことができる。直近の10試合ぐらい、相手を縦にきれいにかわすことができていない。
一方で、三笘はその間に、先述のスーパーゴールを含めて得点を重ねた。ウインガーとしてではなく、アタッカーとしてその名を上げた。トータルで見れば大活躍となる。これを万々歳と見るか、心配するか。筆者は後者だ。まさにドリブル&フェイントという自身最大のセールスポイントが失われつつある現状を憂いたくなる。
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