チャンピオンズリーグで輝く優勝請負人フリアン・アルバレス ハードワークする天才のすごさ (2ページ目)
【流れを変えた魂のドリブル】
劇的な逆転勝利だったレバークーゼン戦、2ゴールをゲットしたアルバレスは文句なしの殊勲者だった。得点もさることながら印象的だったのが27分のプレーである。
立ち上がりからアウェーのレバークーゼンがボールを支配して攻め続ける展開だった。堅守が看板のアトレティコは我慢強く守っていたが、25分にバリオスが一発退場となってしまう。
バリオスは21歳の若手ながら、攻守において不可欠のMF。苦戦を強いられていたこの試合で失うには大きすぎる存在だ。ただでさえ劣勢なのに、10人になってより困難な試合になったのは言うまでもない。
しかし、バリオス退場の直後、アルバレスはたったひとつのプレーでスタジアムを湧きあがらせ、絶対に諦めないアトレティコの精神を鼓舞した。
ひとり前線に残るアルバレスにボールが渡るが孤立無援の状況。だが、アルバレスは力強く前進し、4人に囲まれながらボールをキープし続け、ファウルを誘って敵陣でFKを得たのだ。この絶望的な状況でも、まだ何かが起こるかもしれないと予感させるプレーだった。
52分の同点弾もアルバレスらしいゴールである。
攻め込んだアトレティコが攻め返され、何とか奪ったボールがアントワーヌ・グリーズマンへつながる。ボールはアトレティコ陣内の左側、アルバレスはハーフウェイライン手前の中央あたり。そこから一気に走り出る。
アルバレスのスプリントを見たグリーズマンは瞬間的に利き足の左へ持ち替えてロングパスを蹴る。この判断が的確だった。利き足とはいえ、左足で巻いていく軌道が得点につながったひとつの要因だ。
アルバレスは並走するヨナタン・ターの背中側を走っていた。ターはグリーズマンから放たれたボールとアルバレスを同一視野に入れることができない。アルバレスがすぐそばにいるのはわかっているが距離感はつかめない。このアルバレスのランニングコースが賢かった。
しっかり見えないものは怖い。見えていないがゆえに、相手が余分に速く感じることはよくある。ターは先に慌ててボールに触ったが、ボールは自陣方向へこぼれていった。アルバレスはそのままフリーで抜け出し、追走してきたアレックス・グリマルドを体でブロックして足を振るスペースを確保して、シュートを決めた。
DFの背中をとったランニング、冷静にカバーのDFを制してのシュート。何よりチームに勇気を与える1点だった。
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