久保建英だけではない高評価の日本人サイドアタッカー スペインで活躍が期待されるのは? (3ページ目)
積み重ねこそ、試練である。スペインでは毎日のトレーニングが、少しも気が抜けない。なぜなら30人の所属選手がいて、ほんの一部を除いて、実力差がないからだ。
多くの日本人ファンタジスタは入団当初、拍手で迎えられる。中村(元エスパニョール)、家長、清武弘嗣(大分トリニータ、元セビージャ)など、日本サッカー史上最高レベルの選手が、挑戦の序盤では定位置をもらっている。彼らは技術が高く、トリッキーなプレーも見せた。しかし、それを続ける体力、気力がなかった。戦いそのものに疲弊し、ポジションを失っていった。
うまいだけでは十分ではなく、うまさを出しつ続けることが求められる。
現在の日本人では鎌田大地(クリスタル・パレス)が技術的、戦術的にトップ下として最適の人材だろう。実際、一昨年はレアル・ソシエダ(ラ・レアル)も食指を動かしていた。関係者によれば「移籍金ゼロはいいが、年俸が高すぎた」と金額的に折り合わなかったようだ。
鎌田は過去20年の日本サッカーで最高のセンスの持ち主だが、コミュニケーションが重んじられるスペインでは、彼が持っている一種の真面目さは足かせになるかもしれない。そのキャラクターを否定しないが、スペインでは久保のような奔放さ、明るさが好まれる。明るさとは、ふざけることではない。人や物事に対する楽観、寛容さである。
セカンドストライカーとして、南野拓実(モナコ)も実力者である。たとえばラ・レアルでも、サイドやインサイドハーフでプレーできるはずだ。ミケル・オヤルサバルと争いながら0トップの役割もできそうだし、オーリ・オスカールソン、ウマル・サディク(現バレンシア)のようなFWに大金を積むなら、南野のほうが久保と連係も取れる。しかし言い換えると、明確なポジションが見当たらない。
そう考えると、現実的にはモナコでチャンピオンズリーグに出場するほうがベターだろう。
(つづく)
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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