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マンチェスター・ユナイテッドの迷走がまもなく終わる 39歳の指揮官アモリムが「失われた10年」に終止符を打つ (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【リバプールとアーセナルの例では...】

 また、ピッチ上では、相手陣内のパフォーマンスが急速に整備されてきた。

 マイボールを失った瞬間、複数の選手でサイドに追い込みターンオーバー。そのままショートカウンターを仕掛ける。ボールサイドの人間に限定され、ひとりがはがされるとプレスが無意味になった昨シーズンまでとは雲泥の差だ。

 さらに両ウイングバックが高い位置をとり、センターフォワードと2シャドー、ふたりの中盤センターが加わった6人によるビルドアップも、短期間で効力を発揮しつつある。アモリムがスポルティングで見せた破壊的な攻撃に及ばないとはいえ、グループ戦術が実を結ぶまでには時間が必要だ。

 敵陣やや高めからコンパクトな陣形を維持するシステムも、50日足らずの現状では及第点といって差し支えない。

 それでも、アモリムには多くの批判が飛び交っている。監督就任後、プレミアリーグで喫した11失点のうち、5失点がセットプレーからだ。手もなくやられるため、心象がよろしくない。

 しかし、大半は人為的なミスだった。集中力を欠き、あっさり前を、背後をとられている。選手の心構えさえしっかりしていれば、防げていた公算が非常に大きい。すべての責任をアモリムに押しつけるのはアンフェアだ。

 2015年10月8日、リバプールの監督に就任した当時のクロップは、スピード感に著しく欠けていた攻撃を改善するとともに、練習場、ロッカールーム、本拠アンフィールドに充満していた疑心暗鬼を取り除く作業にも重点を置いた。

「監督として、選手として、プレミアリーグで実績がない」(スティーヴ・ニコル)
「名門を率いる器ではない」(ジェイミー・キャラガー)

 地元愛が強すぎるOBの発言も障壁になっていた。

 3年後、ドイツ人の名監督はリバプールをヨーロッパの頂(いただき)に、翌年はプレミアリーグ優勝に導いた。

 2019年12月20日、アーセナルに着任したミケル・アルテタは、最初の6試合で1勝4分1敗。ボーンマス、クリスタル・パレス、シェフィールド・ユナイテッドに勝てず、周囲の期待を裏切った。最終的には優勝したリバプールと43ポイント差の8位。アルテタ解任論が熱く燃え盛った。

 あれから5年、アーセナルはプレミアリーグ、チャンピオンズリーグの優勝候補である。

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