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マンチェスター・ユナイテッドの迷走がまもなく終わる 39歳の指揮官アモリムが「失われた10年」に終止符を打つ (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【アモリムは就任してまだ50日足らず】

 10年も続いた監督人事の迷走が、間もなく終わろうとしている。11月11日、スポルティングからルベン・アモリム(39歳)がやって来た。レアル・マドリードとマンチェスター・シティが近い将来の指揮官として熱視線を送っていた青年将校の招聘は、イングランド屈指の名門にひと筋の光明をもたらそうとしている。

 昨年11月、グレイザー・ファミリーに代わってユナイテッドの実権を握ったジム・ラトクリフ卿も、アモリムこそが新監督にふさわしいとかねてから考えていたという。いくつかの交渉に不手際が生じ、シーズン開幕と同時に新体制の発足には至らなかったものの、アモリムの招聘は予定どおりだ。

 ただ、この出遅れが響いている。

 今シーズンのメンバーは、あくまでもテン・ハフ前監督の発想によるものだ。アモリム構想の基軸となる両ウイングバックは人材不足で、サイドバックが適任と考えられるディオゴ・ダロト、ヌサイル・マズラウィを起用せざるをえない。さらに相手センターバックを背負えるアタッカーも、ラスムス・ホイルンドただひとりだ。

 本来、こうした事情を踏まえながら夏の間に強化し、キャンプで戦略・戦術を落とし込む。この作業をシーズン中に着手し、週2〜3試合の過密日程のなかで解決策を見いだすのは難しい。グアルディオラ、クロップ、モウリーニョなど、前述した名将でも頭を抱えるに違いない。彼ら同様、名伯楽に数えられるカルロ・アンチェロッティも次のように語っている。

「新しい環境に馴染むまでには、少なくとも三カ月が必要だ」

 アモリムはユナイテッドに着任し、まだ50日足らずである。

「選手の個性を重視する」
「取り巻きではなく、選手自身の話を信用する」
「敗因はすべて私にある」

 アモリムは急ピッチで信頼関係を築こうとしている。

 移籍を示唆したとされるマーカス・ラシュフォードに関しても、「本当に彼がユナイテッドを出たいと話したのか。取り巻きの発言には尾ひれがつくものだ」と、必要以上の摩擦を避ける努力を怠らない。テン・ハフとは正反対のアプローチだ。前監督は時に権力を振りかざし、クリスティアーノ・ロナウドとジェイドン・サンチョをチームから追放した。

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