三笘薫の「縦抜け」が激減しているのはなぜか プレミアリーグ日本人対決は鎌田大地に軍配 (2ページ目)
【三笘らしさを発揮したシーン】
言わずと知れたアヤックススタイルである。ジョゼップ・グアルディオラがバルセロナ時代、たびたび使用したヨハン・クライフ譲りの3バックとしても知られるが、この布陣でアヤックスを欧州一に輝いたルイス・ファン・ハールに言わせれば「あらゆる布陣のなかで最もパスコースが多い布陣」となる。
日本では、超攻撃的サッカーを標榜する一部の監督を除き、ほとんど浸透していない3バックでもある。日本代表戦でいえば、オシムジャパン時代のガーナ戦(2006年10月)で披露された。
この中盤ダイヤモンド型3-4-3は、4列表記に直せば3-3-3-1、3-3-1-3、3-1-3-3で、ブライトンの中盤にはフリオ・エンシソ(パラグアイ代表)を1トップ下に、左ヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)、右ジョルジニオ・ルター(元U-21フランス代表)、アンカーにカルロス・バレバ(カメルーン代表)が座った。
森保ジャパンとの最大の違いは、三笘がウイングバックではなく純然たるウイングに収まったことだ。ウイングバックのいない3バックである。サイドアタッカーの枚数は1.5人(ウイング1と、サイドハーフを0.5に見立てる)になる。4-2-3-1は2人(ウイングとSB各1)なので、0.5人分減ることになったが、クリスタル・パレスはサイドアタッカーが両サイド各ひとりの3-4-2-1である。ブライトンがサイドで数的不利に陥ることはなかった。
攻めるブライトン、守るクリスタル・パレスの構図は鮮明になる。その流れで迎えた後半9分。三笘がこの日、彼らしさを最も発揮したシーンが訪れた。ブライトンはクリスパレス陣内でこれでもかとパスをつなぎ、その15本目にあたるパスがバレバ経由で三笘の足下に収まった。
対峙する相手の右ウイングバック、ダニエル・ムニョス(コロンビア代表)と1対1になると、三笘は仕掛けた。そして後ろ足に当たる右足のインサイドでボールを押し出すように縦に出た。ムニョスのタイミングを外し、ゴールライン際の最深部に進出。すかさず左足でマイナスの折り返しを敢行した。
ジョアン・ペドロのシュートはゴールの枠の前で構えた相手DFに跳ね返されたが、ウイングらしいプレーとはこのことである。ここ数試合、三笘から拝むことができなかったプレーでもあった。
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