プレミアリーグ 三笘薫に軍配が上がった日本人対決 その瞬間、菅原由勢は「忍者」の動きを察知できず (3ページ目)
【サイドバックの菅原を見たい】
ブライトンの活躍選手として、三笘以上に筆者の目を捉えたのは両SBだった。三笘が菅原と対峙すれば、三笘の背後で構えるペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)に活躍する環境が生まれる。逆サイドも同様だ。ランプティが送ったクロスボールを三笘が得点に結びつけたシーンは、この試合の特徴を集約したシーンと言える。
菅原も専守防衛になりがちなウイングバックではなく、SBとしてプレーする姿を見たかった。縦へのスムーズな推進力が持ち味の菅原が、フルに魅力を発揮できぬまま、後半20分という早い時間にベンチに引き上げる姿は、なんとも残念に映るのだった。
三笘は例によってフル出場を果たした。99分(アディショナルタイムは10分)には、ルイス・ダンク(元イングランド代表)のサイドチェンジのボールを、トップスピードで受けながら、右足のアウトでナイストラップ。勢いそのままに縦に突進。対峙するカイル・ウォーカーピーターズ(イングランド代表)のチェックをものともせず、決定的とも言えるマイナスの折り返しをライン際から送り込んでいる。
サイモン・アディングラ(コートジボワール代表)のシュートはゴールポストをわずかに逸れたが、これが決まっていればブライトンは勝者になっていた。三笘はヒーローになり損ねたと言うべきか。
三笘について言えば、日本代表でもウイングバックではなくウイングでプレーするプレーが見たいと、あらためて思った次第だ。同じ三笘でも、ブライトンの三笘のほうが断然、光って見える。
ウインガーにとってSBの下支えは不可欠。ウイングバックでは、相手が強者になると専守防衛に陥る恐れがある。つまり、この日の菅原になってしまう可能性がある。プレミアの大舞台で日本人選手同士がサイドで直接対決する姿に、あらためて日本代表の現状に疑問を覚えるのである。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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