守田英正の同僚・スポルティングのギェケレシュがスゴい 長身の北欧FWは現代サッカーでなぜ活躍? (2ページ目)
【強力な反転プレー】
DFを背負っていて、攻めるべきゴールに背を向けている状況は、FWにとって不利な状況に思えるが、利点もある。
DFからボールが見えない。背負った状態から反転してDFをはがすプレーは、DFにとってはずっとボールが見えていないので、タックルしにくい。タックルできないと言っていい。そこで体のほうを抑えに行くのだが、ギェケレシュはフィジカルコンタクトの迎撃能力が非常に高い。ファウル気味に当たっても倒れない強さがある。
DFに背を向ける利点を最大限活用したストライカーとしては、やはりゲルト・ミュラーが最高だったと思う。1970年代に西ドイツ代表とバイエルンで点をとりまくった史上最高クラスのゴールゲッターだ。ペナルティーエリアの中でパスを受け、一瞬の反転でマークを外してシュートを決めるのは名人芸だった。
逆に、ミュラーが正対するDFを抜いてシュートを決めた場面は、あまり記憶にない。正対するより背負ったほうが抜けるという特殊なタイプだったのだ。低い重心でボールを股下に置いて背後のDFからボールを隠し、素早く横へずらして振り向きざまにシュートを決める。驚異的な俊敏性とゴールの位置を感覚的に知る能力も特殊だったが、ミュラーがこれを使うのはペナルティーエリアの中に限定されていた。
ギェケレシュの場合、ボックス内で反転を使うだけでなく、ゴールから遠く離れたタッチライン際でも使う。反転で外したあとにゴールへ向かうだけのスピードと馬力があるからで、これは短い距離のプレーしかしなかったミュラーとはまったく違うところだ。
比較ついでに、ミュラーとギェケレシュはシュートもまるで異なる。ミュラーはボックス内からの得点がほとんどということもあって、あまり強烈なシュートは打たなかった。一方、ギェケレシュはボックス内外を問わず、基本的に力一杯シュートを打つ。ただ、決して力任せではなく、しっかりボールの中心を叩いていて、上へ浮くことも少ない。
あんなに強く打たなくてもと思わないでもないのだが、渾身の力を込めて1点を打ち抜く。ドリブルと同じく瞬間的に出せるパワーが大きく、その力で上から叩きつけるような蹴り方になっている。その容赦ない感じはストライカーらしくもある。
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