サッカーの「トップ下」はハードワーカー優先へ ユベントスのオランダ人MFは時代の分岐点か (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【新しいトップ下像】

 チアゴ・モッタ監督を迎えたユベントスは戦術的な改革が進行中。新進気鋭の新監督の率いるチームは、ほかのどことも少し違っている。一方、典型的な現代戦術そのものでもある。

 GKから開始するビルドアップ、フィールドを広く使ったパスワークは、多くの進歩的チームに見られるものと同じ。守備でのインテンシティ、コンパクトネスも同様。現代サッカーの出発点とも言える、1980年代後半~90年代のミランを率いたアリーゴ・サッキ監督が言った「攻撃は広く、守備は狭く」のとおりだ。

 プレッシングを世界に広めたサッキの原則を実現するための方法はさまざまで、それぞれのチームがそれぞれのやり方で具現化している。ただ、ユベントスはより丁寧かつ忠実に行なっていると言えばいいだろうか。

 4-2-3-1システムの4バック以外の6人が、ひとつのユニットとなって守備を行なっている。2人のボランチ、トップ下と左右サイドハーフの3人、そして1トップ。この6人がほぼ等距離を保ちながらボールのある場所へ移動していく。

 前後左右の入れ替わりはほとんどなく、五角形がひとつのユニットとして動く。右サイドにボールがある時、左ウイングハーフのケナン・ユルディズはフィールドの中央まで絞り、6人の守備ユニットはフィールドの横半分に収納される。

 いわゆる「クローズ」と呼ばれる圧縮守備なのだが、これ自体はユベントス以外にも行なっているチームはあり、ライプツィヒは4-2-2-2の横圧縮だし、レバークーゼンは1トップ、2シャドー、2ボランチの五角形の守備ユニットだ。

 ユベントスがほかと違っているのは、ユニットが6人であること。そして、そこにトップ下が含まれていることだ。つまり、守備ブロックに組み込まれていない選手がいない。例外になるはずのトップ下というポジションを設けながらも、例外にしていない。

 トップ下に起用されているコープマイネルスは、その意味で新しいトップ下なのだ。

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