かつては稲本潤一、宮市亮、現在は冨安健洋が所属するアーセナルの本拠地「エミレーツ・スタジアム」~欧州スタジアムガイド (3ページ目)
さらに、 スタジアムの周辺にはクラブのレジェンドたち、ティエリ・アンリ、トニー・アダムス、デニス・ベルカンプらの銅像が建っている。当然、ハーバート・チャップマン監督のものもある。「3-2-2-3」の「WMシステム」で1930年代にクラブに初のFA杯のタイトルをもたらした名将として黄金期を築いたチャップマンは、監督の手腕だけでなくアイデアマンとして知られていた。
チャップマン監督がグラウンドで「選手の誰かが赤い袖無しのセーターを白いシャツの上に着ていたの」を見て赤いシャツに白い襟と袖という現在のユニフォームのデザインを考えたとされている。他にも観客が来やすいよう、照明をスタジアムに設置してほしいと訴え続けて(1951年に実現)、遠くからでも選手が識別しやすいように背番号を入れたりすることも考案した。また、スタジアム近くのアーセナルという駅があるが、これは1932年頃、チャップマン監督が国鉄と交渉し、駅名をギレスピー・ロンドンからアーセナルへと名称を変更し、大きな宣伝効果を得たという(ロンドンの中で唯一、クラブ名がついた駅名である)。
アーセナル駅へはロンドンの中心ピカデリーサーカス駅から地下鉄で14分、その駅を下車して3分ほど歩くとスタジアムに到着し、立地も抜群だ。閑静な住宅街だが、ライバルのチェルシーのような高級住宅街とは違ってどことなく下町のような雰囲気を持っている。そのため、数々の映画の舞台になり、映画、テレビ、音楽のスタジオも多くあり、それに関係している人々が多く住んでいるという。
アーセナルはプレミアシップでは、昨シーズンまで2年続けて2位になり、昨シーズンはチャンピオンズリーグでベスト8入りするなど好調を維持している。熱狂的なファンの「グーナー(Gooners)」はエミレーツ・スタジアムで初のリーグ優勝の喜びを味わう日を心待ちにしている。
著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。
【画像】 2024-25シーズン 欧州サッカー注目クラブのフォーメーション
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