セリエAのレギュラーGKやビッグクラブの一員も! 識者がおススメする欧州サッカーで注目の日本人選手たち

欧州サッカー今季活躍期待の日本人選手 後編

新シーズンの欧州サッカー各国リーグもたくさんの日本人選手がプレーしているが、そのなかで誰に注目して見るのが面白いか。後編では、識者に将来の可能性を感じさせる選手たちや、ブンデスリーガでおススメの選手を挙げてもらった。

前編「日本代表のレベルアップ還元に期待ができる選手たち」>>

バイエルンの伊藤洋輝(左)とパルマの鈴木彩艶(右) photo by Getty Imagesバイエルンの伊藤洋輝(左)とパルマの鈴木彩艶(右) photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る

【将来への可能性を感じさせる選手たち】

後藤健生(サッカージャーナリスト)

<期待の選手>
鈴木彩艶(パルマ/GK)
塩貝健人(NEC/FW)
伊藤洋輝(バイエルン/DF)

 これまでの日本人GKで、欧州クラブで一定の地位を確立したのは川島永嗣(現ジュビロ磐田)くらいしかいない。なんといっても、サイズが必要なポジションなのだ。そして、GKは日本代表の弱点でもあった。

 ところが、鈴木彩艶という選手は192センチ100キロとフィジカル的に規格外。もし、彼がその才能を生かしきることができれば、世界的GKに成長する可能性もある。日本代表の森保一監督もそう考えたのだろう。1月のアジアカップでは彼に日本のゴールを任せたが、不安定なパフォーマンスでかえって批判を招くことになった。

 その鈴木がイタリアのパルマに移籍し、セリエAでも開幕から先発を果たし、ミスもあったが、好セーブも見せている。迫力あるキックやスローイングで距離を稼げるのも彼の魅力であり、実際、セリエA開幕戦では鈴木のロングキックが起点となって先制ゴールが生まれた。

 イタリアといえば守備文化の国。パルマといえば、あの名GKジャンルイジ・ブッフォンが育ったクラブだ。そんな環境のなかで、まだ22歳の鈴木が順調に育ち、彼に日本のゴールを任せられるようになれば、次回ワールドカップでの上位進出も現実味を帯びてくる。

 塩貝健人は、なんと関東大学2部リーグの慶應義塾大学から欧州に渡ることになった。J1リーグ、横浜F・マリノスでのゴール(特別指定選手としてプレー)やU-19日本代表での活躍を見れば納得がいく。とくに、モーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際)イタリア戦のハットトリックは圧巻だった。体幹の強さを生かしたゴールはどれも豪快なものばかり。

 9番タイプのセンターフォワードというのは、釜本邦茂が引退して以来、日本サッカー界が追い求めてきたものだ。前線でボールを収め、自らもゴールを決めきれる選手がいれば、戦術の幅は大きく広がる。ワールドカップ最終予選9月シリーズでは上田綺世(フェイエノールト)が好プレーを見せたが、強さが持ち味の細谷真大(柏レイソル)や塩貝が上田を脅かす存在になってくれば、日本代表の攻撃力はさらにアップするはずだ。

 伊藤洋輝は、ドイツの絶対王者、バイエルンにステップアップした。残念ながら開幕前に骨折で離脱してしまったが、なんとか早期に復帰して出場機会を確保したい。

 センターバックとサイドバック(SB)をこなす伊藤だが、バイエルンではやはりSB起用が多くなるだろう。そして、SB、とくに左SBというのは現在の日本代表で手薄なポジションだ。伊藤がバイエルンでCL出場などハイレベルの試合経験を積めば、代表の強化にも直結する。

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プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

  • 林遼平

    林遼平 (はやし・りょうへい)

    1987年生まれ。埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして各社スポーツ媒体などに寄稿している。2023年5月からドイツ生活を開始。

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