元日本代表GK南雄太が「世界の超一流GK」を分析する ドイツ代表ノイアーの常識を超えたビッグセーブに衝撃 (3ページ目)
【誰にもできないスーパープレー】
そんな南氏は、昨シーズンのノイアーのビッグセーブのなかで、最も衝撃を受けたシーンがあるという。2024年1月21日(現地時間)に行なわれたブンデスリーガ第18節、バイエルン対ブレーメンの前半24分にノイアーが見せたビッグセーブだ。
「ノイアーがすごいのは、シュートがディフレクション(選手に当たってボールのコースが変わる)した場合でも、我慢が効くというか、一度体が沈んだ状態になっても、そこからもう一回踏み込んでシュートを止めることができるところです。なかなか真似のできるプレーではないですし、それだけを見ても、単純にパワーを含めた能力が異次元であることがわかります。
その象徴とも言えるのが、ブレーメン戦のビッグセーブです。おそらくノイアーは、ミッチェル・バイザーがシュートを放った瞬間はブラインドとなって、ボールがよく見えていないはずです。
ところが、シュートの瞬間にノイアーは左足に体重が乗っていたにもかかわらず、その直後に味方(アルフォンソ・デイヴィス)にボールが当たって自分の右側にボールが飛んできたのを見て、すぐにもう一度右に飛んでボールを弾き出してしまいました。
普通は、左に体重を乗せた状態でボールの角度が変わったら、もうほとんどの場合は見送るしかありません。しかしノイアーは、瞬時にもう一度右足に体重移動してから地面を蹴って、ジャンプしながら右手で高いボールを弾き出す。もう常識を超えたレベルのプレーとしか、言いようがありませんね(笑)。
あの正確かつ素早い判断と、その判断を見事に体現してしまう身体能力と技術こそ、ノイアーというGKのレベルの高さを物語っていると思います。ほかの誰にもできないスーパープレーと言って間違いありません」
南氏も、このワンプレーにノイアーのすごみが凝縮されている、と感嘆した。
幸い、ドイツ代表は引退しても、ノイアーはバイエルンで引き続きプレーしてくれる。数十年にひとりの逸材とも言えるノイアーのプレーは、今シーズンも注目に値する。
(第2回につづく)
【profile】
南雄太(みなみ・ゆうた)
1979年9月30日生まれ、東京都杉並区出身。静岡学園時代に高校選手権で優勝し、1998年に柏レイソルへ加入。柏の守護神として長年ゴールを守り続け、2010年以降はロアッソ熊本→横浜FC→大宮アルディージャと渡り歩いて2023年に現役を引退。1997年と1999年のワールドユースに出場し、2001年にはA代表にも選出。現在は解説業のかたわら、横浜FCのサッカースクールや流通経済大柏高、FCグラシオン東葛でGKコーチを務めている。ポジション=GK。身長185cm。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
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