「セリエAでGKの活躍は画期的」パルマで奮闘の鈴木彩艶に見る日本サッカーの歴史と未来 (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【鈴木彩艶の特長と課題】

 第1節でも、鈴木はフィオレンティーナ相手に1失点と活躍しており、第1節のベストイレブンに選出した現地メディアもあったという。この試合では、ミラン戦以上に強烈なシュートを浴びる場面が多かったが、いずれのシュートに対しても鈴木は冷静に対応。無回転系のボールは大きくはじくなど、判断も安定していた。

 75分にはフィオレンティーナのクリスティアーノ・ビラーギにFKから直接決められて1対1のドローに終わってしまったが、ビラーギのFK自体は防ぐことが難しい強烈なシュートだった。

 評価が分かれるのはFKを与えたプレーだ。

 パルマ側から見て左サイド。フィオレンティーナのジョナタン・イコネに出たボールをセービングにいった鈴木が、勢い余ってボールを抱えたままボックス外に飛び出してハンドを取られたのだ。

 ミスの原因ははっきりしている。DFとの意思疎通不足だ。

 鈴木としては、センターバック(CB)のアレッサンドロ・チルカティが自分で処理すると思っていたのだろう(実際、チルカティのほうが簡単に処理できたはず)。だが、チルカティはイコネの動きを体でブロックして、ボールは鈴木に処理させようとした。そこで、鈴木は慌てて飛び出さざるを得なかったのだ。

 鈴木とチルカティが互いを理解していれば起きなかったミスであり、新加入の鈴木がピッチに立ったからこその"事故"だった。今後、意思疎通が取れていけば、二度とこうしたことは起こらないはずだ。

 特筆すべきは、鈴木のロングキックからフィオレンティーナ戦の先制ゴールが生まれたこと。鈴木からのボールを左サイドのエマヌエーレ・ヴァレーリが頭で落とし、そこからパスがつながって、右サイドでフリーになったデニス・マンが決めたのだ。

 しかも、得点シーン以外でも、鈴木のロングキックは何度も攻撃の起点となっていた。

 正確なキックを武器に攻撃の起点を作るGKは世界に数多くいる。たとえば、浦和レッズの先輩、西川周作もそのひとりだ。

 しかし、鈴木の場合はそのキックの(あるいはスローイングの)距離感が半端ない。鈴木は、おそらく世界でも有数のロングキックの使い手であり、将来、ロングキックが彼の代名詞となることだろう。

 ただ、第2節のミラン戦では鈴木のロングキックは有効ではなかった。ミラン側がロングキック対策を施してきたからだ。

 そうやって相手チームのよさを丹念に消すのは、セリエAというリーグの特徴だ。そんななか、今後どうやって自らの特長を発揮するのか......。鈴木にとっての大きな課題となる。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る