「セリエAでGKの活躍は画期的」パルマで奮闘の鈴木彩艶に見る日本サッカーの歴史と未来 (3ページ目)
【欧州での日本人GKの活躍は画期的】
こうして、鈴木は移籍直後からパルマの正守護神の座をつかんだ。
今では欧州で活躍する日本人は珍しい存在ではない。だが、鈴木が5大リーグのひとつ、セリエAでGKとして活躍できれば画期的なことだ。
イタリアは守備文化の強い国であり、パルマと言えばあのジャンルイジ・ブッフォン(パルマやユベントスで1995~2023年までプレー。イタリア代表でも活躍)が育ったクラブであり、ブラジル代表のタファレル(1980~90年代に活躍。ブラジル代表GK最多出場)が在籍したこともある。そんなクラブで、22歳になったばかりの日本人GKがプレーしているのである。
日本人選手の海外挑戦は(1970~80年代の奥寺康彦は別として)攻撃的MFから始まった。中田英寿や中村俊輔、小野伸二らがテクニックで道を切り開いた。その後、長友佑都や内田篤人など何人かのサイドバックが活躍したが、フィジカル的な強さが必要とされるセンターフォワード(CF)やCB、GKといった「ゴール前のポジション」は日本人には難しいと考えられてきた。
「日本人は(アジア人は)サイズ的に、あるいはフィジカル的に欧米人には敵わない」
明治の初めに近代スポーツが導入されて以来約150年間、日本のスポーツ界ではずっとそう信じられ、負けた時の言い訳としても使われてきた。
だが、日本人がスポーツに向いていないわけではない。たとえば、先日のパリ五輪での日本の金メダル数は米国、中国に次ぐ3位だった。
体重別で争われるレスリングや柔道にメダルが偏っているとはいえ、特定競技で大量にメダルを獲得するのはどこの国も同じこと。しかも、日本は陸上競技でも1個の金メダルを取ったし、高いアスリート能力が求められる近代五種でも銀メダルが取れたのだ。日本人がスポーツで欧米人に劣っているわけではないことは実証された。
野球界のメジャーリーグ(MLB)挑戦の歴史を振り返ると、1995年には野茂英雄投手が渡米してドジャースで大活躍したが、当時は「日本人はパワーが要求される打者では無理」と思われていた。しかし、2001年にはイチローという打者がMLBを席巻し、さらに長距離ヒッターの松井秀喜も活躍。現在では大谷翔平がホームラン王争いの常連として活躍している。大谷はパワーでもフィジカル能力でも、けっしてほかのメジャーリーガーに見劣りしない。
サッカーでも同じだ。「ゴール前のポジション」ではまず吉田麻也(LAギャラクシー)がCBとして成功。今では冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)などのCBが高い評価を受けるようになった。残っているのがCFとGKのポジションであり、これが日本代表の弱点ということにもなる。
いずれは、高いフィジカル能力が必要なCFやGKでも欧州で活躍する日本人選手が現われるはずだ。
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