遠藤航がプレーするリヴァプールFCの本拠地「アンフィールド」 歓喜と悲劇の130年の時を経て~欧州スタジアムガイド (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【伝統の一戦「マージーサイドダービー」】

 そこでアンフィールドのオーナーは、新しいクラブを創設した。それが現在のリヴァプールだ。ちなみにリヴァプールとエヴァートン両者の対戦は、イングランド北西部のマージーサイド州の西部に河口を持つマージー川にちなんで「マージーサイドダービー」と呼ばれ、1894年から行なわれているイングランドのなかでも屈指の伝統の一戦である(2023-24シーズン終了現在、リヴァプールの99勝68敗77分だ)。
 
 アンフィールドで最も有名なスタンドは、設立当初から存在した熱狂的なゴール裏である「コップ(kop)」と呼ばれるスタンドだろう。1895-96シーズン、2部で2回目の優勝を果たしたリヴァプールは、地元ファンに報いるために、ゴール裏に新たにスタンドを設置し、2万人ほど収容のスタジアムとなった。地元紙の記者が、イギリス軍が南アフリカで苦戦の末に勝利した第2次ボーア戦争(1899~1902年)において、「スピオン・コップ」という丘で、マージーサイド出身の兵士たちが多く亡くなり、その兵士たちを追悼する意味で名づけたという。

 「コップ」は1928年には拡張され、3万人収容のスタジアムとなり、当時は世界で最も大きな一層スタンドになった。また、スタンド改修時には屋根も取り付けられ、ファンの反響する声はリヴァプールが「コップに向かって攻めている時は、ボールをゴールに吸い込ませることができる」と言われるようにもなった。

 1950年代に6万人ほど収容のスタジアムとなったが、アンフィールドも例外ではなく、安全面が重視され、1994年には座席制となり5万人ほどに減少し、コップは1994年には立見席から1万2,390人収容の座席スタンドへ建て替えられている。
 
 アンフィールドのゲートはふたりの名将の名を冠している。ひとつはアンフィールドロード側にあるシャンクリー門で、1959~73年の15年の在任期間に、リーグ優勝3回、FAカップ優勝2回、UEFAカップ優勝1回を達成したビル・シャンクリーの名を冠している。

 シャンクリーはアイデアマンとしても知られ、応援歌としても有名な「You'll Never Walk Alone」は、もともと流行歌だったが、この監督の名言とも言われている。またユニフォームのキットを全身赤にしたのもシャンクリー監督の発案だという。大通りに面したこの門には、シャンクリーの銅像と記念碑も設置されている。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る