レアル・マドリード本拠地「サンチャゴ・ベルナベウ」100年の歴史 改修後の新システムの数々~欧州スタジアムガイド (3ページ目)
さらに2014年、クラブは開閉式の屋根やスタンド、ショッピングモール、ホテルなども併設し、90,000人収容のスタジアムに生まれ変わる新たな改修計画を発表。しかし、2015年2月、マドリード高等裁判所が、この計画が一般的な利益と都市計画規則に反するとみなして無効としたため、プロジェクトは中断されてしまう。クラブはこのプロジェクトを修正し、ホテルとショッピングセンターを廃止、スタジアムの高さを屋根の建設のために12mだけ上げて計60mの高さにして、収容人数を増やす可能性を排除した新しいプロジェクトを提示した。2017年に承認を得て、2019年6月にようやく着工した。
2022年?23年までの完成を予定していたが、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響で、工期は大幅に遅れて、さらに費用も大幅に嵩んでしまったが、2023年9月から徐々に稼働し始め、改修の大半が終了した。
外観は曲面状のステンレススチール製の板で作られ、さまざまな色に変化する照明などが組み込まれた前衛的なデザインとなった。また、天然芝のピッチを6枚に分けて地下へと15分ほどで格納するシステムが搭載された。さらにピッチの周りを囲むように360度のスコアボードが設置され、ライブ映像、リプレー、試合のデータ、スポンサーからのメッセージなど、ひとつの大きな画像や複数のコンテンツを同時に表示することも可能だ。さらに、スタジアムの一番高い部分にはスカイウォークが設けられ、スタジアムと街の眺望が楽しめ、レストランもある。メインスタンドの下には、大きなショッピングセンターも建設された。
今年で建設されて100周年を迎え、今でもファンから親しみを込めて「チャマルティン」と呼ばれる「エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ」。5月にはテイラー・スウィフトのコンサートも開催され、近隣からの騒音の苦情もあったという。またサッカーをするためのピッチは、芝生の悪化も指摘されているなど問題点もある。ただヨーロッパを代表するビッグクラブにふさわしいスタジアムに生まれ変わったと言えよう。
「白い巨人」がこのスタジアムでさらなる栄光を重ねていけば、今後もマドリニスタから愛されるスタジアムとして存在し続けるだろう。
著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。
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