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ユーロ2024フランス対ベルギーの見どころは「ウイング」対決 決勝T1回戦屈指の好カードを制するのは? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ふたりがかりでも止められないドク】

 対するベルギーも最大の売りはウイングになる。

 左ウイングのジェレミー・ドクは、所属のマンチェスター・シティでは、フィル・フォーデンに出場時間で劣る。ジャック・グリーリッシュにも同じことが言えるが、同チームのなんとも言えぬ上品な体質には、彼らのほうがマッチしている。激しいアクションで動き回るドクの出場時間が増えれば、その技巧的なサッカーは暴れる感じになりがちだ。だが、ベルギー代表ではそのプレーのすべてがプラスに作用している。誰にも止められない左ウイング(右もこなすが)として、相手チームに対して圧倒的な脅威となっている。

 ふたりがかりでマークについても止まらない。縦もあれば内もある。失敗はほぼない。エムバペのウイングプレーに負けず劣らず。というより、プレー回数、登場回数では大きく勝る。まさに大車輪の活躍なのだ。

 ドクと1トップを張るロメル・ルカクとの関係も見どころのひとつだ。ドクからルカクへの足下へ差し込むようなパスから生まれるポストプレーは威力抜群。その落としをエース、ケヴィン・デ・ブライネらが狙う攻撃は、フランスを慌てさせるには十分な、可能性を感じさせる立体感のようなものがある。

 一方、右ウイングはドディ・ルケバキオ、ヨハン・バカヨコ、レアンドロ・トラサールが交代で務める。なかでも恐いのはデンベレのドリブルを彷彿とさせるルケバキオの縦突破だ。左足を駆使し、縦にグイグイと出るボール操作術、突破力をどれほど安定的に決めることができるか。

 ただしドクの左ウイングに比べ、右ウイングはプレー回数で劣るという現実がある。この崩れがちな左右のバランスをどう是正するか。好選手として先述したフランスの左SBテオ・エルナンデスの守備機会をいかに増やすことができるか。ここも見逃せない、大きなポイントのひとつになる。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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