EURO2012はスペインが快挙達成、2016はポルトガルが番狂わせ...名場面は続く (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【抜群だったポルトガル指揮官の采配】

 EURO2016はフランスで開催された。それまで16だった本大会出場国は24に増大。まるまる1カ月間に及ぶ、まさしくW杯級のトーナメントになった。フランス全土を旅して回った1998年W杯とイメージを重ね合わせながら、EURO2016の取材旅行の計画を練ったものだ。

 フランスW杯の時に拠点にしたのは、パリのマレ地区にあるプチホテルだった。18年後は趣向を変え、エッフェル塔に近いパッシー通りにあるアパートメントにした。

 もし日本でW杯があれば、宿も日本各地を転々とすることになる。東京から日帰りできる範囲は限られている。静岡でナイターの試合があれば、旅行者は現地に泊まらなければならない。だがフランスは、パリから遠く離れたトゥールーズやマルセイユにいても、試合後、パリに戻ることができた。新幹線を増便するからだ。

「サポーターがホームに残っている限り、列車を動かし続ける」と、フランスW杯の事前取材で、筆者はトゥールーズの駅長から聞いた。それで旅程はずいぶん楽になった。4年後に韓国とW杯を共催する日本でも、新幹線を夜どおし動かすべきと願ったが、結局、そんな話はいっさい、出なかった。

開催国フランスを破ってEURO2016で初優勝を飾ったポルトガルの選手たち photo by AP/AFLO開催国フランスを破ってEURO2016で初優勝を飾ったポルトガルの選手たち photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る EURO2016ではスロバキア、アイスランド、ウェールズ、北アイルランド、アルバニアの5カ国が本大会初出場組だった。出場枠増大の恩恵を受けたチームといって過言ではない。

 ベスト4進出のウェールズをはじめ、その多くは善戦健闘したが、その分、中身が薄まったという印象だった。「16のほうがよかった」と言いたくなるが、本大会出場枠が16どころか、24の時代でも日本はW杯に出場できなかった。初出場は32になってからだった。48チームで争われる2026年W杯を、「それでは中身が薄まる」とつい嘆きたくなるのだが、自分のことを棚に上げて......という話だろう。

 優勝したのはポルトガルだった。フランスとの決勝戦で、クリスティアーノ・ロナウドが前半の途中、ケガで退場。本命に推されていた開催国相手に、絶体絶命のピンチに陥った。

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