EURO名場面 日本人の欧州サッカー熱がピークに 2004年ポルトガル大会はサッカー観が一変した名勝負も (3ページ目)
【ふたつの名勝負】
リスボンのダ・ルスで行なわれた準々決勝。ポルトガルの前に立ちはだかったのがイングランドだった。この一戦が、大会で1、2を争う名勝負になろうとは、想像だにしなかった。
2-2から延長、PK戦に及んだ大接戦。光ったのはポルトガル代表監督、ルイス・フェリペ・スコラーリの采配だった。ブラジル人監督とは思えぬ戦術的交代を鮮やかに決め、イングランドをじわじわ追い詰める姿に、何より心を動かされることになった。出番を失っていたマヌエル・ルイ・コスタが終盤、ピッチに姿を現すと、スタンドは万雷の拍手に包まれたものだ。
試合後、リベルダーデ大通りはスペインに勝った日以上のお祭り騒ぎだった。明け方まで狂喜乱舞は続いた。
この大会でもうひとつ名勝負を挙げるなら、アベイロで行なわれたグループリーグの一戦、チェコ対オランダになる。
キックオフから前半の終盤までオランダが展開したサッカーは、目を見張るような超ハイレベルで、急傾斜のサッカー専用スタジアムからの眺めによく映えた。アリエン・ロッベンがキレッキレのプレーで連続アシストを決め、2-0とした時、オランダの勝利は9割方、堅いと思われた。だが、そこからチェコが3点を連取し、2-3でタイムアップの笛を聞くことになる。オランダが守備的に後ろを固める作戦に転じるや、形勢が一変する展開に、守る怖さを思い知らされることになった。
囲碁将棋を彷彿させるその一部始終は、眺望抜群のスタンドから手に取るように伝わってきた。自らの"サッカー学"を向上させる試合にもなった。何を隠そう、この試合の前後でサッカーの見え方は大きく変わった。
筆者は試合後、ポルトに移動し、リベイラ地区という観光名所のレストランで夕飯を食べたのだが、そこには各国サポーターも集合していて、まさしくインターナショナルな人種のるつぼと化していた。
惜しい試合を落としたばかりのオランダファンの姿もあった。さぞがっかりしているかと思いきや、チェコ人を見つけると近寄り、陽気に酒を汲みかわしている。人のよさを丸出しにしていたわけだが、大事な試合に敗れる気質の一端を、そこに見る気がした。
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