レアル15回目の欧州王者に 苦境を跳ね返したクルトワの美技とサイドの攻防 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ドルトムントに手を焼いた理由】

 マンチェスター・シティを筆頭に、レアル・マドリードを攻撃力で上回るチームは欧州に4、5チーム存在する。大会前の下馬評で1番人気に推されることはない。今季のみならず、14度目の優勝を飾った一昨季も、前評判を覆しながらトーナメントの山をしぶとく勝ち上がってきた。

 過去14度も優勝を飾っている欧州一のクラブなのにチャレンジャー。この絶妙な立ち位置を抜きに、近年のレアル・マドリードは語れない。だが、ドルトムントを相手にすると、チャレンジャーという要素は消える。

 できればあまり攻めたくない。主導権を握りたくない。マンチェスター・シティ戦(準々決勝)、バイエルン戦(準決勝)のように、守備から入る展開を得意にするレアル・マドリードにとって、マイボールの時間が増える展開は、歓迎すべき形ではなかった。ボールを奪っては有効なカウンターを繰り広げるドルトムントに、実際、幾度となく手を焼くことになった。

 14分、フリーで抜けだしたドルトムントの1トップ、ニクラス・フィルクルク(ドイツ代表)のシュートはポスト右に抜ける。21分には同じくフリーで抜けだしたカリム・アデイェミ(ドイツ代表)が、この日が復帰戦となったGKティボー・クルトワ(ベルギー代表)と1対1となるチャンスを迎えた。さらにその2分後、左サイドバック(SB)イアン・マートセン(オランダ代表)のスルーパルを受けたフィルクルクの左足シュートは、右ポストに跳ね返された。

 28分にはMFユリアン・ブラント(ドイツ代表)の縦パスを受けたアデイェミが決定的なシュートを、41分にもMFマルセル・ザビッツァー(オーストリア代表)が強烈なミドル弾を放ったが、しかし、いずれもクルトワの美技に阻まれ、ゴールを奪うことができなかった。

 決定機、惜しいチャンスの数でレアル・マドリードを大きく勝った前半に先制ゴールを決めていれば、レアル・マドリードは苦境に陥っていただろう。

 レアル・マドリードはいつものように、左ウイング、ヴィニシウス頼みのサッカーだった。その足もとにボールが収まると、ドルトムントは途端に静かになった。彼が両軍のフィールドプレーヤーのなかでナンバーワンの選手であることは、一目瞭然となった。

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