レバークーゼンがEL、ドルトムントがCL決勝進出 ブンデスリーガはなぜ強くなった? (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【特別な存在だったレバークーゼン】

 そんななか、突如として頭角を現したのがレバークーゼンだった。

 特化型のなかでも、特別な存在といっていいだろう。欧州連続無敗の記録を更新できたのも、いわゆる「自分たちのサッカー」がひとつではなかったからだ。

 ホームでバイエルンに3-0と快勝した試合(2月10日)、あるいはEL準決勝のローマとの第2戦(5月9日)では、5バックで構えた守備的な戦い方をしていた。

 レバークーゼンは、本来攻撃的なチームだ。3バックと2ボランチの5人を中心とした距離の短いパスワークで相手を引き寄せ、まとめて置き去りにする。偶然に頼らず、意図的にカウンターアタックを創出できる強みがある。

 隙間受けからのシュート、ラストパスで世界有数の実力者となったフロリアン・ビルツ。サイドアタックでスピードを生かすジェレミー・フリンポン、アレックス・グリマルドなど、アタッカーがそれぞれの得意芸を遺憾なく発揮する。その仕組みを作ったところに、シャビ・アロンソ監督の構想の確かさがあった。

 しかし、例のバイエルン戦ではいつものハイプレスではなく少し引いて構え、バイエルンにボールを持たせていた。

 この試合で、バイエルンはシステムをレバークーゼンに合わせている。システムを噛み合わせ、1対1の勝負にして上回る作戦だった。トーマス・トゥヘル監督はシュツットガルト戦(2023年12月17日)でこれをやって、ボール支配率37%で3-0の勝利を収めていた。レバークーゼンに対しても、パスワークを個の戦いに分解してボールを奪い、カウンターでハリー・ケインやジャマル・ムシアラの個人技を生かしてねじ伏せる算段だったはずだ。

 ところが、レバークーゼンは攻めてこないし、前から奪いにもこない。バイエルンはボールを持たされる状況となり、いつもとシステムが違うせいか、ぎくしゃくしたビルドアップを狙い撃ちにされた。おそらく思っていたのとは正反対の展開になっていたのではないか。

 結局、レバークーゼンは34試合で24失点しかしなかった。もちろんリーグ最少。ボールを持てるチームだが、守る時は5バックでしっかり守れる。相手が本来の特徴である攻撃力を潰しにくるなら、わざとボールを持たせてひっくり返してしまう。手の内で転がす戦略性と戦い方の幅は、ただの特化型に収まらないスケールだ。

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