長谷部誠、感極まってラストマッチで涙 「今というタイミングが、みんなにとってハッピー」 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【顔をうずめて、どうにか涙を隠した】

「まあ、僕自身はもう、前節が終わった時(ボルシアMGと引き分け)から、チームがすごく喜んでいたりfeiern(ドイツ語=お祝い)しているのを見て、僕自身は全然まだ(EL)決まってないのになんでこんなに喜んでいるんだろうなって、正直思っていた」

 前節が終了した時点ではEL出場圏獲得の6位は確定しておらず、長谷部はチームの祝賀ムードに疑問符を感じていた。最終節で6位キープを目指すのか、それとも結果を問わないのかで、今季先発機会の少なかった長谷部の出場時間が変わってくることを理解していた。

「サッカーをこれだけ長くやってきた経験上、そんなに物事がうまくいくことはないっていうのは、自分のなかでわかっている部分がある。もっと試合に出られる時間が長く、最後のAbshied......お別れをできる可能性もあったかもしれないですけど、そんなにうまくいくもんじゃないというのは、サッカーの世界で長く生きてきて感じている部分もあって。

 だから、そこに関してはまったく何も思っていない。今日こうして試合が終わって、スタジアム全体でお別れの雰囲気を作ってくれて、そのことは非常にありがたかったですけどね」

「物事がうまくいかないことはある」という言葉は、前日に引退試合を行なった岡崎慎司が「選手でいれば理不尽なことはある」と話していたのと重なって聞こえた。

 サッカーの世界でほぼ頂点に立つ彼らのような選手でも、理不尽で不可抗力な出来事を飲み込んで戦っているのだ。時にあきらめも覚え、それでも立ち上がってきた、おそらくはそんな現役生活だったのだろう。

 引退に対して「うーん、なにも感じないんですよね」と事前から話していた長谷部だったが、さすがに涙をこらえられなかったのは、試合後に娘と息子が駆け寄ってきた場面だった。

 3人でぎゅーっと抱き合ったまま、長谷部の顔は見えない。そのうちキョロキョロとし出す娘と息子に、長谷部が顔をうずめるようにして、どうにか涙を隠した。

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