久保建英の価値はスーパーアシストだけにあらず 先頭に立って勝利もたらす (2ページ目)
【従来の日本人と一線を画す戦闘力の高さ】
「ダビド・シルバが引退し、アレクサンダー・セルロートは移籍し、コンビを組む選手は変わったけど、タケは誰とでも適応できる。開幕からカルロス・フェルナンデス、ミケル・オヤルサバル、ウマル・サディク、アンドレ・シルバと組んできて、それぞれの力を引き出している。その連係力こそが、タケの魅力と言えるだろう」
欲を言えば、久保はダビド・シルバのようなパートナーを得ることで、相手をもっと翻弄できるはずだった。
アルセン・ザハリャンはプレースキックが得意だが、全体的にプレーがスローで、久保の感覚にはついていけていない。サディク、シェラルド・ベッカーはパワーやスピードは出色だが、セルロートのような気の利いたプレーはできない。アンドレ・シルバは資質こそ備わっているが、慢性的な故障もありシーズンを通したプレーが望めない状況だ。
それでも、プリエトが語っていたように、久保は周囲の最大限を引き出している。本来の力を出せれば、ラ・リーガ屈指のアタッカー。今シーズンのラ・リーガ年間最優秀選手賞、U-23年間最優秀選手賞にノミネート(それぞれジュード・ベリンガム、ラミン・ヤマルなど計10人)されたのも、驚きではない。
久保が過去の日本人選手と一線を画している点は、戦闘力の高さにあるだろう。技術や俊敏さだけでなく、90分間を通してファイトできる。たとえば後半アディショナルタイム、体力的にきついはずだが、一度失ったボールを取り返すたくましさは、「艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えても必ず勝利する」という気概で、エースの称号にふさわしい。
「Tirar del carro」
スペイン語で「一番つらい仕事を引き受ける、先頭に立ってやる」という意味だが、それは責任感や勝利への欲求とも言い換えられ、エースの条件と言われる。「重い荷車を引いていく」というニュアンスで、リーダーシップの喩(たと)えだ。
実際、バレンシアは久保を相当に警戒していた。前半からコツコツと足を削り、腕を引っ張ってストレスを与えている。後半に入っても、ディエゴ・ロペスがしつこいマークで久保の上から覆いかぶさってきたし、交代で出場したセルジ・カノスは肘で久保の顎を叩き、スペイン代表の左サイドバック、ホセ・ルイスガヤは後ろから足首を削っていた。
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