林陵平がアーセナルのチーム戦術、選手の特長を徹底解説 悲願のプレミア制覇なるか (2ページ目)
【GKを使ったポゼッションも特徴的】
――攻撃面はいかがですか?
攻撃面で、ビルドアップのあとの崩しの局面で特筆すべきは、右サイドの関係性です。4-3-3の右SBホワイト、右インサイドハーフのウーデゴール、右ウイングのサカと、3人の関係性が非常によく、このままの位置関係で攻める時もあれば、サカにボールが入った時にホワイトが追い越すサポートをしたり、ウーデゴールが内側でサポートし、3人目の動きでホワイトが出て行くという形もよく見られます。
サカがカットインした時に、ウーデゴールが絡んでワンツーで抜け出す。ウーデゴールがランニングしてできたスペースを使って、サカがドリブルで進入するシーンもお馴染みだと思います。こうした3人のローテーション、関係性がうまくできているので、右の攻撃はスムーズです。
左サイドはマルティネッリが単騎で突破できるので、左SBのキビウォルや冨安は主に後ろでサポート。また、左インサイドハーフにカイ・ハヴァーツが入った時は、右サイドからチャンスを作った際にボックス(ペナルティーエリア)内に進入していました。
誰が出ても同じような戦い方ができつつ、異なるキャラクターで違いも生み出せています。
――GKを使ったポゼッションも特徴的ですよね。
決してアーロン・ラムズデールの足元がないというわけではないのですが、ラヤはポゼッションに適したGKです。状況に応じて、たとえば後ろが3枚になった時に、左CBの役割でラヤが前に入ってきて、相手のフィールドプレーヤー10人に対してプラス1を作ることができます。
そこからドリブルをするわけではないのですが、ここに入ることによって、一瞬全体の配置を整える時間ができるだけで、チームがまったく変わるんですよ。
ここで相手のプレスが来た時に蹴り出すしかなくなれば、全体の布陣が間延びしてしまいますが、ここでGKがサポートに入るだけで相手は前から取りに行けなくなります。その1、2秒だけで全体を落ち着かせて、バランスを整えることができるGKがラヤなのかなと思います。
基本的には、やはりGKはボックスの外には出たくないものですが、そこに組み込む配置作りをアルテタ監督がしています。状況に応じて、キビウォルが高い位置を取った時に前に入りましょう、というのがチーム戦術として組み込まれています。
また、ラヤは手前の選手だけではなく奥を見れる。遠くウイングのサカやマルティネッリの足元にボールを預けることができるのも大きいです。
それに1トップにハヴァーツが入ることで高さも生まれたので、そこにプレスをひっくり返すボールを入れて、全体が陣形を押し上げる形もあります。自分たちのプレースタイルがありながらも、相手を見てプレーができる点も今のアーセナルの強みです。
セットプレーも、2024年初頭のキャンプからキッカーをマルティネッリからライスに変えて、そこから得点が生まれるようになっています。セットプレーコーチもいますし、キャンプでの成果もすごく出ています。CBのサリバ、ガブリエウが、守備をしながらもゴールを決めてくれるのが大きいですね。
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