三笘薫が見せたプレミアの真髄 イングランド代表を翻弄するも、上には上がいた (3ページ目)
【アーセナルの強さが際立ったが...】
後半27分にはタッチライン際を走る三笘の鼻先に、センターバック、ルイス・ダンクから縦パスが送られる。ホワイトと1対1になると、まず縦方向へ、続いて内方向へ、そして再度、縦方向へのアクションを取った。すると、身体はホワイトと衝突。三笘がエリア内で倒れ6万余人の観衆は固唾を呑むも、主審はPK判定を下さなかった。
この日、ブライトンでもっとも惜しかったプレーが訪れたのは、それから10分後、後半37分だった。左サイドでジョアン・ペドロ(ブラジル代表)のスルーパス気味の縦パスを受けた三笘は、ホワイトの背後を取ると、右足アウトでゴール前に決定的なラストパスを差し込んだ。グロスが放ったシュートはネットを揺るがしたが、ゴールかと思いきや、サイドネットだった。
これが決まっていれば後半43分、アーセナルにカイ・ハヴァーツ(ドイツ代表)のダメ押しゴールは決まっていなかったはずである。
スコアは0-2。アーセナルの強さが際立った試合。ひと言で言えばそうなるが、ブライトンの健闘が光る試合でもあった。強者に対して大人数で守りを固めるのではなく、しっかり打って出ていく姿勢にファンは感激、感動を覚える。次戦を楽しみに待ち焦がれる。
三笘に対し再三遅れを取ったアーセナルの右SBホワイトは、勝利の輪に加わりにくかったのではないか。また三笘も、自身のウイングプレーに満足することはできなかったのではないか。上には上がいることを、この試合を通して思い知ったのではないか。
アーセナルの左ウイング、マルティネッリのウイングプレーは、三笘を6.5とするなら8.5をつけたくなる出来映えだった。それぐらい凄まじい切れ味を披露した。三笘はアーセナルの左ウイングを任されたら、マルティネッリ級のウイングプレーができるだろうか。三笘にとっても刺激になる一戦だったはずだ。
三笘のレベルは上がりこそすれ、低下することはないだろう。そう言いたくなるこの日のアーセナル戦だった。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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