三笘薫が見せたプレミアの真髄 イングランド代表を翻弄するも、上には上がいた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【スタートダッシュでDFの動きの逆を】

 前半にも同様なシーンはあった。先述の38分、ボールを大きく出してホワイトに走り勝っている。この時は、三笘が俊足ぶりを際立たせるや、その瞬間、ホワイトに反則で止められている。そこで警告を受けたホワイトが、レッドカードを恐れたことも、2度目のスピード勝負で三笘の完勝に終わった理由かもしれない。

 陣を挽回した三笘の背後を左SBミルナーが走る。オーバーラップしたその鼻先に三笘が縦パスを送ると、次の瞬間、アーセナルゴール前にはきれいな弧を描くセンタリングが送り込まれていた。

 そのクロスはアーセナルDFにクリアされたが、そこから展開されたアーセナルのビルドアップを阻止したのも三笘だった。三笘は左ウイングの位置で構えるゲームメーカーだと述べたことがあるが、この一連の好守はまさにMF的なプレーだった。ブライトンにおいて中心選手でいられる意味がよくわかるシーンと言えた。

 スピードを生かしたウイングプレーについてひと言加えれば、置いて行かれたホワイトは瞬間的に、ともすると反応の悪い選手に見えた。冨安健洋とポジション争いのライバル関係にあるこのイングランド人SBは、スタートダッシュで大きく三笘に遅れていた。三笘が走り出す前に、ホワイトの動きの逆をしっかり取っているからに他ならない。シンプルに走り比べをしたわけではなかった。

 その直後、ブライトンベンチは傾きつつある流れを確かなものにしようと、果敢にも3枚替えの交代に打って出る。

 すると三笘が鋭いプレーで応えた。戦術性の高い縦パスをパスカル・グロスに送る。32歳のドイツ代表MFが、左足でマイナス気味のセンタリングをゴール前に送ると、18歳のジャック・ヒンシェルウッド(U-19イングランド代表)が、ヘディングでこの日チームとして初となるシュートを放った。

 試合は斬るか斬られるかの撃ち合いになっていく。しかもハイレベルである。プレミアリーグの真髄を見るかのような、エンタメ性が満点の攻防に発展していった。

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