三笘薫がEL初戦で見せた完璧な折り返し だがブライトンは挑戦者になりきれなかった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Image

 ヨーロッパリーグ(EL)開幕戦。たとえばLASK(オーストリア)と戦ったリバプール(イングランド)は、前戦の国内リーグ対ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦から先発メンバー全員を入れ替えて臨んだ。ウルブス戦で出場機会のなかった遠藤航が、欧州カップ戦初出場を先発として飾ることができた理由である。つまりリバプールはメンバーを落として戦った。その結果、先制点を奪われる苦しい展開を強いられた。逆転したのは遠藤らを下げ、主力級を投入した後だった。

 LASKは昨季のオーストリアリーグ3位のチームだ。ELというれっきとした欧州のカップ戦ではあるが、ふだんプレミアリーグで戦っているチームに比べて戦力は劣るかに見える。スタメン級を休ませたくなる気持ちはわかる。しかし、その一方で未知のチームだ。相手はしかも、リバプールという強者に一泡吹かせようと研究を尽くし、ベストメンバーを向けてくる。

 主力を休ませたくなるほど弱いチームがないチャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグとは、その点に大きな違いがある。CLでは格下と思しきチームでも油断は禁物。ほぼベストメンバーで臨もうとする。だが、ELとなると少し事情は変わってくる。どんな感じで臨めばいいか。頃合いが難しくなる。

 昨季のプレミアリーグでリバプールに次いで6位に入ったブライトン。EL出場はクラブ史上初の出来事で、ともするとチャレンジャーに見える。しかし、ブックメーカー各社の優勝予想に目を移せば話は変わる。リバプールに次いで2番人気に推されているのだ。

 初戦の相手はAEKアテネ(ギリシャ)。プレミアリーグが欧州ランク1位ならば、ギリシャリーグは20位で、AEKは昨季のギリシャリーグの覇者である。前戦のマンチェスター・ユナイテッド戦からメンバーを落とすべきか否か。悩むところである。欧州のサイトを眺めれば、三笘薫はベンチスタートとの予想が多くを占めた。

 2時間15分前にキックオフされたLASK対リバプール戦で、リバプールが苦戦しているとの情報が、あるいはブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督の耳に入ったのかもしれない。三笘はAEK戦のスタメンに名前を連ねることになった。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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