シント・トロイデン伊藤涼太郎が岡崎慎司からの金言を胸に飛躍を誓う 日本代表戦を刺激に奮闘 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 とはいえ、そんな試合で待望の初ゴールが生まれるのだから、巡り合わせとは不思議なものだ。

 伊藤自身も、「前節(対シャルルロワ戦1-1)は結構チャンスメイクもして、自分的にはわりといいプレーが多くて、それでも点が取れなかったんですけど、今節はあんまりよくなくて、逆に点が取れた」と語り、こう続ける。

「本当にラッキーだと自分では思っています。まだまだ改善しないといけないところも多いので」

 しかしながら、ことゴールに関して言えば、これぞ伊藤涼太郎、と言うべき技巧によるものだったのは間違いない。

 左サイドからペナルティーエリア内に走り込み、ヤルネ・ステウカースからのスルーパスを受けると、冷静に相手GKの動きを見ながらやや体を開き、巻き込むような右足シュートでニアサイドを打ち抜く。

 まさに、伊藤の十八番だった。

「あの形、ファー(へのシュート)を見せながらニアに打つっていうのは得意な形なんで。それをうまく、このベルギーの地で出せたのはすごくうれしいです」

 さながら、今季J1第8節アビスパ福岡戦(3-2)のハットトリックを想起させるような鮮やかなゴールは、アルビレックス新潟サポーターにとってもうれしかったのではないか――。

 そんなことを尋ねると、伊藤はうなずき、わずかばかり表情を緩めて口を開いた。

「そうですね。今シーズンはニアに打ち抜くゴールが多かったんで、新潟サボーターの人たちも多少は喜んでくれているんじゃないかなと思います」

 試合を通して振り返れば、決して納得のいく出来ではなかった。「得点以外は今年一番悪い」という言葉は、偽らざる本音だろう。

 しかし、現在のチームメイトにして、偉大な先輩でもある岡崎慎司から「そういう試合で点を取るのはすごく大事なこと」だと声をかけられたという伊藤は、「ポジティブにとらえて、しっかり次の試合に向かいたい」と言葉に力を込める。

 Jリーグでの華々しい活躍を置き土産に海を渡ったファンタジスタも、ベルギーリーグでの出場は、この日でまだ6試合を数えたにすぎない。

 それでも初ゴールまでの道のりについて、「う~ん」と唸って一拍置き、「長かったです」と伊藤。「たくさんのチャンスがありましたし、ここまでゼロ(無得点)できていたっていうのは、攻撃の選手としてやっぱり責任を感じていました」。

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