久保建英の進化にソシエダは追いつけるか CLを前にこれだけの不安要素 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【現地紙は久保に高評価もチームは不調】

 後半、久保はさらに躍動している。51分、中盤に落ちてGKのロングパスを受けると、左を走ったミケル・オヤルサバルに左足で絶妙の展開。54分、右サイドを縦にボールを運び、マーカーを振りきってクロスを折り返し、味方のシュートはブロックされた。しかし相手のバックパスを久保がすかさず回収。自ら左足でゴールを狙ったが、これもバーの上に外れた。

 73分には、すでに交代していた左サイドバックを簡単に振りきって、マルティン・スビメンディに絶好のクロスを送ったが、ヘディングはGKにセーブされる。スコアレスのまま推移したが、得点になってもおかしくはなかった。

「ラ・レアルの選手で、一番インスピレーションを感じさせた。パワー切れになるまで、挑戦することをやめなかった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の評価は端的だろう。

 75分、モハメド・アリ・ショと交代でベンチに下がったのは、控え目に言っても"意外"だった。

「(久保は)痛烈だった。マーカーの(セルジ・)カルモナの対応に当初は手こずっていたが、一度制すると、そこから深みを作っている。2本の決定的シュートを放ち、2本目は決められる形だった」

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』も、久保をそう称賛している。

 もっとも、各紙が最高評価を与えたのは、前節と同じくGKアレックス・レミーロだった。全体で見ると、やや不利だった試合でのスコアレスドロー。レミーロは一度ならず、決定機を止めていただけに、最高の殊勲者と言えるだろう。

 つまり、チームとして好調とは言えない証左だ。

 敵地とは言え、似たスタイルのラス・パルマスに劣勢だった事実は重い。攻撃の仕組みは昨シーズンと同じだが、精度は低くなっている。阿吽の呼吸のパスで崩すような場面はほとんどない。相手に読まれているのもあるだろう。

 また、ラス・パルマスでジョナタン・ビエラのような"アーティスト"が躍動しているのを見ていると、「ダビド・シルバがいれば......」という嘆き節が出てしまう。ダビド・シルバはラ・レアルの仕組みを完結させていた。ラス・パルマス戦でデビューしたアルセン・ザハリャン(ロシア代表)は前線で緩急を作るよりも、強度を与えるタイプで、「後継者」という評判には疑問符がつく。

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