給与未払いでオーナーは暴言、トラに遭遇、3日間停電...昨季インドでプレーした日本人サッカー選手が語る「すべてが想像以上だった」生活 (2ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Uchida Kosuke

【インド移籍までの経緯】

 ISLは立ち上げ時に元フランス代表のダビド・トレゼゲ(プネ・シティ)やニコラ・アネルカ(ムンバイ・シティ)、元イタリア代表のアレッサンドロ・デル・ピエロ(デリー・ダイナモスFC)ら世界的な往年のスター選手を呼び集めたほか、元日本代表監督のジーコ(FCゴア)らを指揮官として招くなど話題を呼んだ。日本人選手では過去に遊佐克美やカレン・ロバート(ともにノースイースト・ユナイテッド)もプレーしたが、待遇や環境面において内田がプレーしたIリーグとは大きな開きがあるとされていた。

 ただし、Iリーグとはいえ、代表歴などのない外国人選手が簡単に移籍できるかといえば、そうではない。そこで内田はまずIリーグ2(3部相当)のデリーFCに移籍し、そこからIリーグのクラブへのステップアップを狙ったと振り返る。

「最初に行ったのは22年2月です。たまたまラオス時代のポルトガル人コーチが、デリーFCのオーナーとつないでくれて。ただ、行ってみると給料の未払いに加え、それまでIリーグの1部と2部は開催時期がずれていたのに、この年から同時期に行なうようになり、先に開幕する2部で活躍して1部に移籍するという目論見が外れました。それに、前の年まであった外国人枠がなくなるという噂まで出てきたので、一度はインドでのプレーを諦めて帰国しました」

 だが、帰国すると、デリーFCのコーチや分析官がIリーグのスデバ・デリーFCに移籍し、スデバが外国人選手を探しているとの情報を聞いた。しかも、スデバがJリーグの湘南ベルマーレとパートナーシップを提携していたこともあと押しになり、消えかけていた内田のインド移籍が決まった。

 Iリーグは22年11月に開幕し、内田は開幕戦からMFとして5試合に出場。しかし、無念にもシーズン途中での退団を余儀なくされた。

「スデバもデリーFC同様に、サラリーの未払いが続き、移動やサッカーをする環境もよくなくて......。監督は日本人で、その方は3節が終わったところで辞任されました。僕もFIFAの弁護士に相談し、『すぐにサラリーが支払われないなら退団します』とクラブに伝えると、オーナーは『もともとひざの古傷があっただろ。日本に帰ってゆっくり治療すれば』と開き直るありさま(笑)。外国人選手は僕やトリニダード・トバゴ代表経験のある選手などを含めて5人いたのですが、全員退団しました」

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