久保建英の強気の姿勢から生まれたゴールで逆転勝利 レアル・ソシエダ、CL出場が見えてきた (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影photo by Nakashima Daisuke

【紙一重の勝負を制した】

 攻撃でも、盟友ダビド・シルバとのコンビネーションは悪くなかった。ボールもよく集まっていたし、複数の選手に囲まれても動じない姿を見せ、相手の警戒心が伝わってきた。崩し役として、一定の仕事をしていたと言える。

 しかし、得点につながらなかったことで、グレーのフィルターで通したように映ったのだろうか。対面の敵となったユーリ・ベルチチェが堅実でパワフルなマーキングを見せたのも事実で、完全に出し抜けなかったのも大きい。また、交代前に久保自身がこぼれ球で決定機を得たにもかかわらず、シュートのコースはやや甘かった。

 久保のプレーはこの2試合で大きく変わっているわけではないが、評価はチームの結果次第で大きく左右されるところはある。たとえばラージョ戦も、無理な突破からのボールロストでカウンターを浴びたシーンで失点していたら、まさに戦犯として槍玉に挙げられていたかもしれない。その危機を味方が守り抜いてくれたことで、久保にもう一度チャンスが訪れ、2点目に結びつくプレーになったのだ。

 ラージョ戦では、スペイン大手スポーツ紙の『マルカ』、『アス』ともに星ひとつ(0-3の四段階評価なので、星ひとつは下から二番目)だった。そこまで高い評価ではないが、「彼のプレーがゴールにつながった」とは認めている。決勝点に絡んだ(記録は相手のオウンゴール)カルロス・フェルナンデスも星ひとつであり、悪くもない評価だ(このゲームでは、2本のアシストを決めたアイヘン・ムニョスが星ふたつで際立っていた)。

 久保がリスクを恐れず、仕掛け続けたことが、2点目につながったのは間違いない。多くの選手は、ポジションを失ったり、非難を浴びたりする可能性があるために失敗を恐れてしまい、あそこまで前向きに挑むことはできないだろう。それほど勇敢な姿だった。

 言わば、久保は紙一重の勝負を制したのである。

 おかげで、ラ・レアルは4位をキープした。5位のベティスが敗れたことによって、勝ち点差は6に広がった。これは、チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に向け(スペインは4位までがCLに出場)、大きな前進と言えるだろう。残り8試合で、おぼろげながらゴールが見えてきた。

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