長谷部誠「40歳でブンデスリーガに出てすごい」と言われる心境は? 24歳でドイツに渡って積み重ねてきた重み (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

【当時は海外志向ではなかった】

 クラブの成長期、長谷部の代表引退、クラブへの専念──。長谷部は契約更新の背景として、さまざまな要素のおかげだと説明する。ただ、自信をにじませながら客観的で謙虚であるという点も、こうしてひとつのクラブに長くいられる要因なのかもしれない。

 長谷部は3月24日にフランクフルトで行なわれたU-22ドイツ代表vsU-22日本代表の試合にも駆けつけていた。21日の東京での会見後、スケジュールはとんぼ返りの強行軍だ。

「JFAの方からフランクフルトでやるんでぜひ来てくれ、と言われて。空港に到着したのが(24日の)17時前で、空港から直接スタジアムに向かってちょうど試合開始5分前ぐらいに着いたんです。日本とドイツという、自分にとってゆかりのある国の若い選手たちの現状を感じられたのはよかったですけどね」

 この試合、前半は日本が圧倒的に攻められながら失点し、その後に2得点を奪って逆転......というところまでは、カタールW杯のドイツvs日本のようだった。だが、その後に失点して2-2で試合を終えている。

 試合後のロッカールームに、長谷部は同じく助言や鼓舞を求めて招待されていた川島永嗣とともに訪れた。若者たちにはこんな言葉をかけたのだそうだ。

「ああいう年代の選手たちは、自分が描いている場所とは違う場所で今、プレーしているかもしれない。世界にはもっと高いレベルでプレーしている選手がいるなか、そういうところも見ることは大事だと思うんですけど、でも今いるところで(頑張れと言った)。僕も(当時は)海外でプレーするとか、あんまり考えてなかったんで」

 U-22欧州遠征に参加している選手たちも、Jリーグや欧州の各所属クラブでポジションを掴んでいる選手はひと握り。不本意な場所で戦わざるを得ない選手もいる。同年代の海外トップ選手たちは世界で活躍しはじめており、複雑な思いを抱える年代だ。

 そんな若者たちを思いやりつつ、言葉をかけたようだ。長谷部自身も若手だった頃、同世代が出場するU-20ワールドカップやアテネオリンピックを経験できず、難しさを感じていたのかもしれない。

「目の前の1日1日、そういうものに真剣に向き合って積み重ねてきた結果が、チャンピオンズリーグやワールドカップにつながっていると思う。みんなも今を大事にしてくれ、という話をしました」

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