久保建英が「正直、ほっとした」と本音を吐露 ダビド・シルバとのコンビで決勝弾 その関係性も語る
レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英が、真価を発揮した。
3月19日、昔からアノエタという愛称で知られる本拠地にエルチェを迎えると、久保は後半2分、鮮やかな決勝点を叩き込んでいる。阿吽の呼吸の関係を結ぶダビド・シルバからのスルーパス。絶妙のタイミングで裏を取って、斜めに左へ流れながらコースを確保し、得意の左足でボールをファーサイドに流し込んだ。
「ゴールを決めて勝てて、正直、ほっとしています」
久保はその気持ちを吐露している。直近のマジョルカ戦、ローマ戦と先発を外され、チームもヨーロッパリーグで敗退していたが、自らのひと振りで悪い空気を振り払った形だ。
エルチェ戦で先制ゴールを決めた久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る「今日の前半は一番多くシュートを放ったんですが、ひとつも枠に飛ばず。いい感覚だったけど、チームが必要とするゴールが取れなくて、勝てない間は責任も感じていたから、(ゴールが取れて)ほっとしました。(ローマ戦は先発でプレーすると思っていたから)痛みを感じて......その気持ちは偽れない。でも充実した日々を過ごし、自分が重要だと感じられている。ラ・レアルは何年もボールを大事にするプレーを続け、みんなサッカーを知っているから、そういうファンに愛されるのは最高です」
ラ・レアルで、久保は成長を続けている。エルチェ戦の久保は立ち上がりから躍動した。
4分、カウンターからシルバが持ち込み、ゴール前で相手を崩れ落ちさせるほどの切り返し。右サイドへ流れていた久保は、完全にフリーでラストパスを受けた。このシュートは惜しくも外れてしまったが、予感のある幕開けとなった。
この日、シルバは異次元のプレーを見せた。スペイン大手スポーツ紙『マルカ』も両チームを通じて最高の星三つを与えていた。彼だけの宇宙があった。そのシルバに一番引っ張られて"旋回"したのが、久保と言えるだろう。
8分、シルバが展開を作ってからシュートのこぼれ球を回収し、右へ叩くと、ここでも右サイドへ流れていた久保がパスを受ける。久保は左足でボールを突きながらゴールに向かって切り込み、シルバとワンツー。リターンをダイレクトに左足で打っている。
1 / 3
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。