久保建英が見せたリーガ4年でのベストゲーム。バスクで英雄となるのは必然だった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【切れ目ない動きで今季3ゴール目を決めた】

 レアル・ソシエダを率いるイマノル・アルグアシル監督が語っているように、今はディフェンス力もチームに活力をもたらしている。

 アスレティック戦の久保は、誰よりも鋭い出足でプレスをかけ、カタールW杯の日本戦でもミスをしたスペイン代表GKウナイ・シモンを苦しませ、パスミスを誘っている。24分の先制点も、その流れだった。パスミスから押し込み、相手がどうにか弾き出したボールを味方が押し戻し、エリア内でセルロートが収めて左足で叩き込んだ。

 そして36分、久保にとって自身、今シーズン3得点目もウナイ・シモンへのプレスとパスミスが"予兆"だった。ウナイ・シモンからのフィードを受けた選手が、やや強引に持ち出そうとしたところ、ダビド・シルバが巧妙に奪い返し、そのパスに久保が素早く反応。遅れてきたディフェンダーの股を抜き、GKとの1対1を完璧に制し、ニアを撃ち抜いた。

 久保は攻守が途切れなかった。激しいプレスをかけるだけでなく、味方が奪い返した直後のパスに準備ができていた。間断のない動きで、アスレティックの選手を上回った。

 後半59分にPKを奪ったシーンはその典型と言える。

 相手が自陣内で囲まれて滑り、焦ったところだった。バックパスにいち早く反応していたのが、前線の久保だった。パスを奪ってゴール前に突入し、絶好のライン取りのドリブルでエリア内に入ると、後ろから来たジェライ・アルバレスに倒されている。アスレティック陣営からは「ダイブ」と抗議を受けたが、完全なPKで、アルバレスはレッドカードだった。

「ベンチからは接触があったかどうかは見えなかった。しかし、もし接触がなかったら、タケは倒れたりしないだろう。なぜなら、十分に2点目を狙える状況だったから」

 アルグアシル監督の冷静な証言がすべてだろう。

 久保が勝負の決着をつけた。相手を10人にし、反撃の余地を与えなかった。チームはリーガ・エスパニョーラで3位を堅持。おまけに膝の前十字靭帯のケガから復帰した主将、ミケル・オヤルサバルが得意のPKで315日ぶりに得点する舞台まで作った。

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