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W杯優勝のメッシはマラドーナを超えたのか。アルゼンチンサッカーを40年追ってきた自国ベテラン記者の見解 (3ページ目)

  • セルヒオ・レビンスキー●文 text by Sergio Levinsky
  • 井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi

【実績は間違いなくメッシがマラドーナを凌駕】

 しかし今、メッシはついにW杯までも手に入れたのだ。タイトルや実績だけで言えば、間違いなくメッシがマラドーナを凌駕している。メッシは代表でもクラブレベルでも、主要タイトルはすべて獲得しているが、マラドーナはコパ・アメリカとチャンピオンズリーグ(前進のヨーロピアンカップ時代を含む)を獲っていない。

 またマラドーナ本人が「あんなもの(コカイン)に手を出さなければ、自分のキャリアはもっとすばらしいものになっていた」と引退後に振り返っていたように、彼のキャリアは長くなかった。かたやメッシは現代のトップアスリートらしく、常に入念に心身をケアし、食べ物や私生活にも気を配っている。

 近年はパーソナリティーにも変化が見られ、世界一になった。

 あるいは──、このような見方は不要かもしれないが、マラドーナが2020年に天に召され、もう誰も御大にメッシの評価を伺う必要がなくなったから、メッシが感じていた重圧が軽減され、2021年のコパ・アメリカ、そして2022年のW杯に手が届いたのかもしれない──。マラドーナとは、アルゼンチン人にとって、それほどまでに大きな存在なのである。

 メッシとマラドーナ、どちらが偉大か? どちらも偉大だとしか、私には言えない。意見は世代や趣向によって異なるはずだし、結局のところ、そんな議論もまたフットボールの醍醐味のひとつだ。

【筆者プロフィール】
セルヒオ・レビンスキー
Sergio Levinsky/アルゼンチン出身。ブエノスアイレス大学社会科学学部を卒業。バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号も取得。1982年より記者として活動を始め、ワールドカップは1986年メキシコW杯よりすべての大会を取材。アルゼンチン国内の各種メディアで活動するほか、ヨーロッパのスポーツメディアや日本のメディアにも記事を寄稿している。

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