「フランスの未来に楽観的だ」とデシャン監督。W杯連覇を逃すも若い選手が躍動、4年後への期待は一段と高まった

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 連覇に挑むべく臨んだワールドカップ決勝の舞台で、フランスは絶体絶命の崖っぷちに立たされていた。

 試合序盤からアルゼンチンの攻勢にさらされたフランスは、前半23分にFWリオネル・メッシのPKで先制されると、同36分には鮮やかなカウンターからFWアンヘル・ディマリアに追加点を許し、0-2。アディショナルタイムも含めれば、前半もまだ10分以上の時間を残す時点で、早くも2点のリードを奪われる展開を強いられていた。

 試合を見ながら思い出されたのは、1998年フランス大会の決勝だ。

 それは、地元フランスがブラジルを3-0で下し、ワールドカップ初優勝を成し遂げた試合なのだが、24年後のこの日、フランスが演じていたのは当時とは逆の、ブラジル側の役である。

 優勝候補筆頭と目され、順当に勝ち上がってきたブラジルは、しかし、肝心の決勝ではまるで覇気がなく、前半のうちにフランスに2点のリードを許した。

 のちに、エースストライカーのFWロナウドが精神的なプレッシャーに耐えきれず、試合前夜に異変をきたし、チームに動揺が広がっていたことが明らかとなったが、そんなことでもなければ説明がつかないほど、ブラジル選手の動きは鈍く、反抗の意欲も感じられなかった。

 結局、ブラジルは後半終了間際にも追加点を許し、0-3の完敗。1994年アメリカ大会に続く連覇を逃している。

 今回のフランスもまた、試合途中までは24年前のブラジルとほぼ同じ道をたどっていたと言っていい。劣勢のなかで先制されても、一向に試合の流れを変えられない。出足で遅れ、ボールの奪い合いで敗れ、あっけなく追加点を与えてしまう。

 試合前から、フランス代表に体調不良者が続出しているとの報道がなされていたが、それを裏づけるようなプレーの連続だった。試合後の会見でフランス代表のディディエ・デシャン監督に対し、「試合を前に選手に何かあったのか」という質問が出ていたが、それも当然のことだろう。

 後半に入っても試合の流れは変わらず、後半60分を過ぎてもフランスの選手たちは集中力が切れたかのようなイージーミスを連発。試合は、まさに24年前の再現に向かって進んでいた。

 ところが、である。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る