W杯連覇目前のフランスで、抜群の貢献を見せているのはグリーズマン。得点を生み出す前線の巧みなプレーを見逃すな (2ページ目)
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グリーズマンが中間ポジションに入り、ヴァランの縦パスを呼び込んで裏へ抜け出した
最初のポイントは、フォファナからヴァランへサイドチェンジのパスが展開された時に、逆サイドのデンベレがオートマチックにタッチライン際へ開き、ヴァランからのパスコースを作ってモロッコの左サイドバック、ヌサイル・マズラウィを釣り出したところである。
ヴァランは前方へ縦パス。グリーズマンが裏に抜けて受けて、ゴール前のチャンスにつなげたこの記事に関連する写真を見る これによって、左センターバックのジャワド・エル・ヤミクとの間にスペースができていた。そこを狙ったのが、アントワーヌ・グリーズマンだ。
グリーズマンはひとつ前のプレーで、右サイドからダイアゴナルに裏へ抜け出す動きを狙い、ヴァランにパスが入る時はエル・ヤミクの背中側にいた。そこからデンベレがスペースを空ける動きをした瞬間にエル・ヤミクの前に入り、中間ポジションを取りに行った。
これがエル・ヤミクに対する駆け引きになっている。相手が慌てて前に出てくれば、空いた裏のスペースに走り、相手が遅れれば中間ポジションでパスを受けて、起点を作ることができる。
この場面では前者となった。エル・ヤミクは慌てて前に出てきたが、グリーズマンはそれをいなすようにバックステップ。この時、ヴァランはグリーズマンの足元ではなく、少しずらしてスルーパスのようなボールを選択した。これも見事だった。
エル・ヤミクはずらされたボールに触れず、グリーズマンは入れ替わるように裏へ抜け出すことに成功。そのあとはキリアン・エムバペのシュートのこぼれ球をテオ・エルナンデスが技ありのボレーで詰めて、先制点を挙げた。
今大会のグリーズマンは得点こそないものの、攻守に渡る貢献度は極めて高い。巧みなポジショニングと抜群のパスセンスで攻撃の起点を担う背番号7が、決勝でどのようなパフォーマンスを見せるか注目である。
【筆者プロフィール】
篠幸彦(しの・ゆきひこ)
1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の”実戦ドリル”でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。
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