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日本代表はクロアチアのモドリッチを封じることができるか。「酢」と呼ばれるバロンドーラーの素顔 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Fujita Masato

「気を抜くなんて、あり得ない」

 モドリッチは、そんな泥臭いサッカーに彩りを与える。

 モドリッチの異能は、どのポジションにいても、そこで必要とされるタイミングでアクションを起こせることにある。トップ下でも、アンカーでも、サイドでも、彼は周りを動かし、自らも輝く。どこでも100%の力を出せる「トータルプレーヤー」で、おそらくポジションの概念などないのだろう。それゆえ、意外性のあるプレーを繰り出せるのだ。

 性格的には寡黙なタイプである。少なくとも、決して饒舌ではない。天才アタッカーは自己顕示欲の強さが仇になるタイプも多いが、彼は常にチームプレーヤーとして振る舞う。といっても、おとなしいということではなく、激情の持ち主だけにゲームで敗れた後などはその本性が出る。

「Vinagre」

 レアル・マドリードのチームメイトからは、スペイン語でしばしばそう揶揄される。「ビネガー(酢)」が直訳になるが、転じて「怒りっぽい人」「不機嫌な人」を意味する。負けると仏頂面になって、いつも以上に寡黙になるからだ。

「自分には、いつも"もっとできる"という思いがある。サッカーに関しては、満足するなんてことはない。それは幼少期に、クロアチアで戦争を体験したからかもしれない。サッカー選手になって、気を抜く、緩めるなんて、あり得ないんだよ」

 モドリッチはこともなげに語っているが、その意味は深い。

 幼少期は過酷だった。紛争の勃発によって6歳で故郷を追われ、祖父を殺され、避難を続け、難民たちと肩を寄せ合ってホテルで暮らした。彼にとって、ホテルの裏でボールを蹴る時間だけが、つらさを忘れさせたという。いつしか、「サッカーによって自分が生かされた」という思いが芽生えたのだろう。

「自分にとって、プレービジョンやテクニックは自然にあったもの。(どうして自分のようなプレーができるのか)説明するのは難しい。その能力に恵まれたことに感謝し、ひたすら改善を重ねてきただけだよ」

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