V候補ブラジルがスイス戦の辛勝で改めて示したもの。カゼミーロ「前回大会とは多くの違いがある」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 こうなれば、あとは高度なテクニックを生かしたパスワークでボールをキープし、時折スピードアップした攻撃をちらつかせるだけでよかった。ブラジルは追加点こそなかったが、楽々と残り時間を費やし、1-0で勝ち点3を手にした。

「美しいゴールだったと言ってくれるのはうれしいが、重要だったのはチームの勝利をアシストできたこと」

 決勝ゴールを決めたカゼミーロは試合後、勝利に興奮する様子も見せずにそう語り、「大事なのはタイトルを獲ることだ」と先を見据える。

 この試合、ブラジルが勝利したとはいえ、かなり苦しんだことは事実である。だが、裏を返せば、そのことがチームとしての総合力の高さを見せつける結果になったとも言える。

 準々決勝でベルギーに敗れた前回大会のチームとの違いを問われたカゼミーロは、「多くの違いがある」と言い、こう続けている。

「新しい選手が加わり、幅広い選手を選べる状態にある。控え選手のオプションがかなり多いのは間違いない。その一方で、ディフェンス陣には経験がある。前回よりもかなり偉大なチームになっている」

 実際、スイス戦を振り返っても、ネイマール不在の影響がまったくなかったわけではない。初戦でネイマールが務めたトップ下のポジションには、MFルーカス・パケタが入ったものの、中盤でのコンビネーションが生まれにくく、攻撃に停滞が見られた。

 だが、チッチ監督は後半開始から「ケガによるものではなく、戦術的なオプションとして」ルーカス・パケタに代え、FWロドリゴを投入。すると、ブラジルの攻撃にスピード感が増し、ゴールへ向かう推進力が生まれた。

 チッチ監督が語る。

「カゼミーロも言ったように、今の我々には幅広いオプションがある。(前回大会から)4年間を費やして成長してきた。4年前のチームとはまったく違う」

「それに」とつないで、チッチ監督が続ける。

「私のそばには偉大なプロフェッショナルがついていてくれる」

 試合後会見の壇上に座る指揮官が指差す方向に目をやれば、現在はチームのスタッフを務める往年のブラジル代表選手、ジュニーニョ・パウリスタらがズラリと並んで会見の様子を見つめていた。

 かつてJリーグでも活躍し、現在は指揮官のサポート役を務めるセザール・サンパイオが、チッチ監督とともに試合後会見に登壇するのも、今や見慣れた光景だ。

 チッチ監督は誇らしげに、そしてうれしそうにこう語る。

「我々は全員がファミリーだ」

 ブラジル代表は20年分の借りを返すべく、チーム一丸となって王座奪還へと進んでいる。

【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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