鎌田大地、PKで相手GKにニヤリ。フランクフルトがCL史上稀な混戦を制した理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

鎌田のポジション変更で流れは一変

 鎌田は前節のマルセイユ戦に続き、5-2-3(3-4-2-1)の守備的MFで出場した。彼がド真ん中に座るとチームに重みが生まれるとは、前節のマルセイユ戦を見て抱いた感想だが、この日はどこかプレーに落ち着きがなかった。雑なプレーをした味方選手のプレーに苛立ち、叱責する場面も見て取れた。勝たなければベスト16入りはないという設定に平常心を奪われたのか、彼自身も気がつけば持ち場を離れ、2シャドーの一角かと思わせる高い位置に進出していた。バランスの悪さを露呈させたフランクフルトが前半38分、失点を許したのは、当然の結果だった。

 GKのキックを高い位置で奪われ、その流れからイングランド人ウインガーのマーカス・エドワーズに右サイドを崩されると、ウルグアイ代表MFマヌエル・ウガルテに、アシストとなるセンタリングを許した。決めたのは逆サイドで構えたブラジル人選手、アルトゥール・ゴメス。スポルティングはポルトガル史上初の快挙に向け好発進を切った。

 一方、ヴェロドロームの試合は、マルセイユが先制点を挙げていて、この瞬間、D組は1位スポルティング(10)、2位マルセイユ(9)、3位スパーズ(8)、4位フランクフルト(7)の順で並んだ(カッコ内はこのまま終わった場合の勝ち点)。

 ところが4チームの上下は、劇的にも残りの45分で真っ逆さまに入れ替わることになる。

 フランクフルトは後半、鎌田のポジションを2シャドーの一角に上げ、守備的MFにはバイエルンなどで活躍したベテランのセバスティアン・ローデを投入する。すると流れは一変。運もフランクフルトに味方した。後半14分、鎌田とウルグアイ代表、セバスティアン・コアテスがエリア内で競り合った時、主審の笛が吹かれた。鎌田が背中で相手を押したようにも見えたが、主審はコアテスのハンドを取った。

 この重大な場面で当然のような顔でPKスポットに登場したのは鎌田。ジョゼ・アルバラーデをほぼ満員に埋めたスポルティングファンの大ブーイングを浴びながらも、鎌田は助走に入る間際、相手GKに向けてニヤリとした。CLで3試合連続となるゴールを、大物感を存分に漂わせながら右足のインフロントで蹴り込んだ。

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