日本代表はスペインを恐れる必要はあるか。クラブ&代表が弱体化していった理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

レアル、バルサの選手で代表チームを組めない

 ユース年代でも、国外クラブに引き抜かれることが少なくない。それは今も才能の宝庫である証明だが、かの地で伸び悩むケースも多く見られる。たとえば「ポール・ポグバ以上」と謳われたイライシュ・モリバはよりよい条件を求めてバルサを出て、ドイツのライプツィヒに移籍したが、鳴かず飛ばずで、結局、スペイン(バレンシア)に舞い戻った。言わば、パワーダウンの連鎖だ。

 一方、クラブのスタンスも気になる。優秀な下部組織を持ちながら、ワールドクラスの選手に大枚を叩くようになった。

 今シーズンのバルサは象徴的だろう。ロベルト・レヴァンドフスキを獲得し、彼自身はゴールを量産している。しかしスペイン代表のフェラン・トーレスは出場機会が減った。同じくスペイン代表アンス・ファティへの出番の与え方も限定的。また、バルサBで昨シーズン19得点のフェラン・ジュグラはベルギーのクラブ・ブルージュに移籍を余儀なくされている。ジュグラはベルギーでトップスコアラーを争っており、CLでも2得点を挙げて、チームのアトレティコを退けての決勝トーナメント進出に貢献している。

「バルセロナ寄り」とマスコミから批判されているスペイン代表のルイス・エンリケ監督「バルセロナ寄り」とマスコミから批判されているスペイン代表のルイス・エンリケ監督この記事に関連する写真を見る そして単純に「スペインらしさ」の濃度は減った。欧州王者のレアル・マドリードも、主力はカリム・ベンゼマ、ティボー・クルトワ、ルカ・モドリッチなど外国人選手。スペイン人の人材は変わらずにいるが、スケールは小さくなった。

 その昔、スペイン代表は70%以上をバルサ、レアル・マドリードの選手でほぼ均等に分け、残りが「それ以外」という陣容だった。2010年南アフリカW杯でスペインは優勝しているが、たとえばオランダとの決勝戦の先発11人中10人が、レアル・マドリード(イケル・カシージャス、セルヒオ・ラモス、シャビ・アロンソ)、バルサ(ジェラール・ピケ、カルレス・プジョル、セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデス、ペドロ、ダビド・ビジャ)の選手だった。

 錚々たるメンバーが、バルサ、マドリードで中核を成していた。しかし今は、かつてほど傑出したスペイン人選手はいない。たとえばバルサのセンターバック、エリック・ガルシアはうまいが、あまりに貧弱だ。

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