ドイツのミュラーはなぜ神出鬼没なのか? 風間八宏は「ボールを持たずに試合をコントロールできる」と分析 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

ペナルティーエリアに近づけたくない

「難しいのは、ミュラーはボールを持っていない時に狙いを持っていることです。それならマークすればいいかというと、マークされるのを想定してポジションをとっているかもしれませんし、マークされない場合も考えているかもしれない。その駆け引きにとらわれすぎると、気づいた時にはゴールを決められているかもしれません。

 ただ、自分の目の前でボールを持たれる分には、そこから何かが生み出されるケースは少ないので、それほど恐れる必要はありません。ひとつ言えるとすれば、なるべくミュラーをペナルティーエリアに近づけないようにすることでしょう。

 ただし、ペナルティーエリアから離れている時も、きっと数手先を読んでポジションをとるでしょうから、どちらにしても、厄介な選手であることは間違いありません(笑)」

 現在のドイツ代表では主にトップ下でプレーするミュラーだが、右サイドでプレーする時もあれば、最近のバイエルンでは1トップも務めるなど、そのプレーには柔軟性と懐の深さがある。しかも、常に相手の急所を見ながら動いていることを考えると、相当に抑えるのが難しい選手と言えるだろう。

 果たして、カタールW杯で日本のDF陣はミュラーをどのように抑え込むのか。ボールを持たない時のミュラーの動きに注目しながら試合を見ると、わかりにくいミュラーの凄みを目撃できるかもしれない。

トーマス・ミュラー 
Thomas Muller/1989年9月13日生まれ。ドイツのバイルハイム・イン・オーバーバイエルン出身。10歳でバイエルンの育成組織に入り、2008年にトップチームデビュー。以降FWとMFでプレーし、バイエルン一筋で今季15シーズン目を迎えている。この間、ブンデスリーガ11回、チャンピオンズリーグ2回優勝。ドイツ代表では過去3回W杯に出場し、2010年南アフリカW杯では得点王を獲得。2014年ブラジルW杯では優勝を経験している。

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風間八宏 
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

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