CLを振り返るセルティック旗手怜央。幻の初ゴールシーンも含め目指している「守って、つないで、ゴール前まで行く」プレーを詳細解説 (3ページ目)
田中碧が教えてくれたこと
セルティックでボランチの位置まで下がってプレーするようになり、いつだったか川崎フロンターレ時代のチームメイトだった田中碧に聞いたことがあった。
「完全には周りの状況が見えていないなかで、どうやって前にパスを出しているの?」
すると、碧はこう教えてくれた。
「たとえばだけど、自分のところにマークに来ている選手が、相手のサイドハーフだったら、自分のチームのサイドバックは空いていることになるよね。アンカーの選手が自分に食いついてきているならば、DFとの前、間が空いている。誰が来ているかによって、逆にその選手が本来、埋めるべき位置が空いているのが何となくわかるんだよね」
おそらくだけど、碧はそれを中村憲剛さんから教わったのだろう。川崎フロンターレでプレーしている時、憲剛さんはピッチを俯瞰して見ることができると言われていた。憲剛さんは、自分が試行錯誤している何歩も先を見て、未来を走っていた。
碧にその話を聞いてから、自分も誰がマークに来ているかを意識して考えるようになった。徐々にだが、ボランチのポジションまで落ちてボールを受けた時、誰が自分に対してプレスに来ていて、その選手がどこのポジションだったか。さらに、それならばどこが空いているかもしれないというのが想像できるようになってきた。
インサイドハーフはFWと同じく、ゴールに対して背を向けてプレーする機会が多いが、ボランチは前を向く機会も多い。あくまでボランチが本職ではないことを明言しておきたいけど、うしろまで下がりすぎず、それでいて前にも出ていける立ち位置を探すなかで、碧が見ている世界がわかる瞬間が増えてきた。
新しいことから逃げずチャレンジし、模索することで、新しい自分に出会い、成長することができる。CLという舞台はそれをより強く実感させてくれる。
カタールW杯を前にした最後の活動期間である9月、日本代表に選ばれ、ドイツ遠征に参加した。しかし、アメリカ戦ではメンバー入りできず、エクアドル戦でも試合に出場することは叶わなかった。アピールする機会を得られず、選手としてはやはり悔しい思いだけが残った。その悔しさをCLにぶつけたい。
セルティックとして、このサッカーで、どこまで自分たちが、自分がやれるのか。6試合で終わらせたくはない。逆境こそ成長の種になると信じている。
旗手怜央
はたて・れお/1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU-24日本代表として東京オリンピックにも出場。2021年12月31日にセルティックFC移籍を発表。今年1月より、活躍の場をスコットランドに移して奮闘中。3月29日のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。
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